今日の診療
治療指針

血管性認知症
vascular dementia(VaD)
冨本秀和
(三重大学大学院特定教授・神経病態内科学)

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GL認知症疾患診療ガイドライン2017

GL脳卒中治療ガイドライン2021

治療のポイント

・脳血管障害に起因する認知症であり,脳血管障害の予防と治療が重要である.

・適切な生活習慣の維持による血管因子の管理が必要である.

・アルツハイマー病と高率に合併し,両者が合併する場合は抗認知症薬が使用可能である.

・不安・焦燥などの行動・心理症状を起こしやすく,必要に応じて向精神薬を用いる.

◆病態と診断

A病態

・血管性認知症は脳血管障害に起因して生じる認知症である.最も汎用されているNINDS-AIREN診断基準の分類では,①皮質領域を中心とする大小の梗塞の多発による多発梗塞性認知症(MID:multi infarct dementia),②戦略的部位の単発梗塞による認知症(strategic single infarct dementia),③脳小血管病性認知症(small vessel disease with dementia),その他に分類されている.脳小血管病性認知症が最も頻度が高く,血管性認知症の5割,多発梗塞性認知症が2~3割を占めている.

・近年,血管性認知症とアルツハイマー病は高頻度に合併することが明らかになり,両者の連続性も指摘されている.このため,治療優先の立場から,血管性認知症,混合型認知症(血管性認知症とアルツハイマー病の合併),血管性軽度認知障害,脳卒中後認知症を包含する用語として,血管性認知障害(VCI:vascular cognitive impairment)も用いられている.

・頻度の高い脳小血管病性認知症では,前頭葉症状が前面に立つことが多く,実行機能障害,アパシー,抑うつ,不安・焦燥などが目立ち,健忘は比較的軽度である.初期は歩行の不安定性や非特異的めまい感を訴えるが,進行すると下肢優位の血管性パーキンソニズム(lower-half parkin

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