頻度 あまりみない
治療のポイント
・脊髄梗塞はまれであるが,大動脈手術において注意すべき合併症である.
・亜急性に進行する中年男性の脊髄症(特にバルサルバ負荷で症状が悪化する場合)では脊髄硬膜動静脈瘻を疑う.
・外傷後や(抗凝固薬や硬膜外麻酔を要する)手術後に生じた急性脊髄症では,脊髄硬膜外血腫を念頭に迅速に対応する.
◆病態と診断
・脊髄血管障害には,脊髄梗塞,脊髄動静脈奇形(硬膜動静脈瘻,海綿状血管腫など),中枢神経血管炎,遺伝性神経皮膚症候群(Cobb症候群,von Hippel-Lindau病など)によるものがある.
・脊髄梗塞の多くは,前脊髄動脈症候群(腰背部痛),対麻痺または四肢麻痺,解離性感覚障害(温痛覚と表在覚が障害され,深部覚は保持される),膀胱直腸障害を生じる.Adamkiewicz動脈支配域の下部胸髄が好発部位であり,アテローム硬化,大動脈解離,ステントグラフト留置,膠原病や梅毒などの血管炎に伴って発症する.診断には脊髄MRIが必須であり,拡散強調画像やT2強調画像で高信号病変を呈する.
・脊髄硬膜動静脈瘻は,静脈うっ滞による脊髄障害(静脈性梗塞,髄内出血,くも膜下出血)をきたす.診断にはMRIで脊髄表面または髄内のflow void所見が鍵となる.確定診断には脊髄血管造影検査を用いる.診断・治療が遅れると脊髄萎縮をきたすFoix-Alajouanine症候群にいたる.
・鑑別診断として,感染性脊髄炎,多発性硬化症,亜急性脊髄連合性変性症,HTLV-I関連脊髄症などがある.
◆治療方針
脊髄梗塞では保存療法が主となる.浮腫軽減目的でステロイド,10%グリセロール,脳保護薬としてエダラボンの投与を考慮する.血栓塞栓症と判断されれば,慢性期に抗血小板薬を使用する.
脊髄硬膜動静脈瘻には,血管内治療による人工塞栓術または観血的摘出術を専門的機関において実施する.
発症当初は脊