頻度 あまりみない
治療のポイント
・治療遅延が,死亡あるいは重い後遺症と強く関連する神経救急疾患である.
・脳膿瘍を疑った際は迅速な抗菌薬治療の開始が求められる.
・排膿と起因菌同定を目的とした外科的ドレナージと長期の抗菌薬投与が治療の基本である.
・直径2.5cm未満や多発性,深在性の膿瘍では,抗菌薬治療が主体である.
◆病態と診断
A病態
・脳実質内に細菌や真菌など原因微生物が限局性に感染し,炎症細胞浸潤が進展して被膜を伴う膿瘍形成に至る.
・感染経路は,①中耳炎や副鼻腔炎,歯周病など脳に隣接した組織からの直接浸潤,②肺や心内膜からの血行性播種による感染,③頭部外傷や脳外科手術後が挙げられる.
・起炎菌としてレンサ球菌やブドウ球菌,嫌気性菌が多いが,緑膿菌やMRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus),免疫不全状態では真菌やトキソプラズマも考慮する.
B診断
・最も頻度の高い症状は頭痛で,発熱や意識障害,けいれん,片麻痺や失語,失調などの神経脱落症状が出現する.ただ診断までの経過は多彩で,数日~数か月に及び,死亡率は10%程度である.
・血液検査での炎症反応は乏しく,必ずしも脳脊髄液検査での異常を伴わない.
・血液や脳脊髄液培養,膿瘍穿刺液の培養が有用であるが,起炎菌検出率は高くない.なお,頭蓋内圧亢進が考えられる場合には腰椎穿刺は禁忌である.
・頭部造影MRIは感度が高く質的診断に有用である.被膜のリング状造影効果や周囲の脳浮腫,拡散強調画像での膿瘍内部の高信号が特徴的である.
◆治療方針
A内科的治療
1.抗菌薬
脳膿瘍が疑われた段階で迅速に脳脊髄液移行性の高い抗菌薬を6~8週間静注にて投与する.起炎菌不明のことが多いので,当初は広域の第3世代セフェム系や広域ペニシリン系抗菌薬を用いる.起炎菌同定後に感受性のある抗菌薬に変更する.真菌感染ではさら
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