今日の診療
治療指針

結核性髄膜炎
tuberculous meningitis
岩田育子
(北海道大学病院・脳神経内科)

頻度 あまりみない

GL標準的神経治療:結核性髄膜炎(2015)

治療のポイント

・診断確定に時間がかかるため,結果判明前であっても暫定的に診断し,治療開始する.

・イソニアジド(INH)とリファンピシン(RFP)は結核治療におけるキードラッグであり,これらを中心とし,感受性があり系統の異なる抗結核薬の多剤併用および長期治療が必須である.

・副腎皮質ステロイドの併用は死亡率と後遺障害を減少させることから,HIV感染非合併例では重症度にかかわらず併用すべきである.

◆病態と診断

A病態

・結核性髄膜炎は中枢神経系へ結核菌(Mycobacterium tuberculosis)感染が及んだ場合と定義される.通常,結核菌は肺に初期変化群を形成し,その後血行性に全身に播種する際に多臓器の感染巣が形成され,中枢神経系に及ぶと髄膜炎を起こし,引き続く結核腫が形成される.

B診断

・脳脊髄液一般所見の典型例では,無色清澄,初圧上昇,白血球増多(10~1,000/μL),蛋白質上昇(50~300mg/dL),乳酸高値,脳脊髄液糖の相対的低値(脳脊髄液糖/血糖比0.5未満)を認める.

・脳脊髄液の塗抹培養による結核菌同定は信頼性の高い手段であるが,塗抹の感度は10~37%,培養は35~52%前後である.

核酸増幅法のなかで,商業化されたsingle PCRの検査期間は短く,感度は56%,特異度98%程度である.診断陰性となった場合にはnested PCRを考慮する.

・頭部CT所見は正常な場合も多いが,病態の進行に応じ脳底部・脳槽部の高吸収域や水頭症を認める.頭部MRIはより鋭敏であり,ガドリニウム造影を組み合わせることで結核腫の検出も鋭敏である.

◆治療方針

 ランダム化比較試験が少なく,観察研究と日々の診療から得られた経験に基づく.標準的治療はWHOおよび英国感染症学会の推挙するものであり,処方例に示す.

A標準的

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