今日の診療
治療指針

進行性核上性麻痺
progressive supranuclear palsy(PSP)
渡辺宏久
(藤田医科大学教授・脳神経内科)

頻度 あまりみない

GL進行性核上性麻痺(PSP)診療ガイドライン2020

治療のポイント

・進行性核上性麻痺に対してL-ドパはパーキンソン病ほど効果を認めず,治療効果も長続きしないが,特に治療早期や病型によっては有効な場合があり,十分量の投与を試みる.

・多数例の検討結果はないが,トリヘキシフェニジル,アマンタジン,アミトリプチリン,タンドスピロン,ドロキシドパなどが一時的に有効な症例がある.

・早期から嚥下障害や繰り返す転倒に留意する.

◆病態と診断

A病態

・進行性核上性麻痺は,背景にタウ病理(4リピートタウオパチー)を有する神経変性疾患である.

眼球運動機能異常姿勢保持障害,運動緩慢,認知機能障害が中核症状である.

B診断

・ほぼ確実の診断基準を満たすには垂直性核上性注視麻痺,もしくは緩徐な垂直性衝動性運動の存在が必須である.これに加え,①3年以内に繰り返す誘発によらない転倒もしくは3年以内のプルテストにおける転倒の傾向の存在,②3年以内の進行性すくみ足もしくはL-ドパ抵抗性のパーキンソン症状の存在,を確認する.

・眼球運動障害に加えて,前頭葉性の認知行動障害(アパシー,精神緩慢,遂行機能障害,音素性語流暢の低下,衝動性・脱抑制または保続,の5種類のなかで3種類以上)を認める場合も,ほぼ確実の診断基準を満たす.

・また,発話・言語障害の目立つ臨床病型,大脳皮質基底核症候群の臨床病型,小脳性運動失調を満たす臨床病型も存在する.

・MRI矢状断における相対的に橋腹側の保たれた中脳被蓋の萎縮所見も,補助診断として有用な所見である.

◆治療方針

 対症療法が中心となる.また抗パーキンソン病薬の効果も限定的である.転倒,嚥下障害が早期から起こるため,運動療法,療養環境の整備,嚥下訓練の導入を考慮する.

 少数例の検討であるが,タンドスピロン,ドロキシドパ,アマンタジン,アミトリプチリン,トリヘキシフェニジ

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