今日の診療
治療指針

球脊髄性筋萎縮症(Kennedy病,Kennedy-Alter-Sung病)
spinal and bulbar muscular atrophy(SBMA)
漆谷 真
(滋賀医科大学教授・脳神経内科)

頻度 あまりみない(本邦における2019年の患者数1,508名)

ニュートピックス

・トリプレットリピート病としての本疾患に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド治療開発が進んでいる.

治療のポイント

・リュープロレリンは,運動機能低下抑制,肺炎や死亡率の低下を目的として用いられる.

・運動,嚥下機能に応じた生活指導やリハビリテーションを行う.

◆病態と診断

・X染色体上のアンドロゲン受容体遺伝子のCAG反復配列異常伸長(38回以上)によって発症するポリグルタミン病であり,進行性の運動ニューロン疾患である.

・20~50歳の男性患者に発症し,舌,上下肢近位優位の筋萎縮と筋力低下,手指振戦などの運動症状に加え,男性ホルモン機能低下に基づく女性化乳房を認める.

・線維束性収縮を伴う舌の萎縮は特徴的であるが,筋萎縮性側索硬化症(ALS:amyotrophic lateral sclerosis)と比較して皺襞間(ひだの間)は保たれ,嚥下障害は軽度であることが多い.

・血液検査では,CKの高値を示し,耐糖能異常や心電図異常を合併することがある.

・経過は比較的緩徐であるが,発症後10~15年程度で自力歩行が困難となることが多い.球麻痺による誤嚥性肺炎が生命予後にかかわる.

◆治療方針

 本疾患は指定難病であり,関連する治療費や検査費は公費により補助される.さらにリュープロレリンの使用には遺伝子診断が必須のため,遺伝カウンセリングを踏まえた包括的対応を進める必要がある.

A疾患進行抑制目的で

Px処方例

 リュープロレリン(リュープリン)SR注 1回11.25mg 12週間に1回 皮下注

注意 遺伝子検査による診断確定例のみ保険適用がある.

注意 挙児希望の若年患者の場合は投与時期について相談する.

Bリハビリテーション

 ロボットスーツ(HAL:Hybrid Assistive Limb)を用いた理学療法が保険適用を

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