今日の診療
治療指針

本態性振戦
essential tremor
永井将弘
(愛媛大学医学部附属病院特任教授・臨床薬理神経内科)

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治療のポイント

・根治的治療法はなく,症状を緩和する対症療法が中心となる.

・振戦の程度が軽度で日常生活や仕事に支障がない場合は経過観察となっていることも多い.

・日常生活に支障がある場合は通常薬物療法から開始する.

◆病態と診断

A病態

両側上肢に主に姿勢時,運動時にみられる振戦で,上肢に加えて頭部振戦がみられることもある.

・進行は非常に緩やかである.

・家族歴を認めることが多いが,孤発例もあり原因は不明である.

B診断

・診断に有用な画像検査はなく,頭部MRI検査でも異常は認められない.

・パーキンソン病との鑑別のためにはドパミントランスポーターシンチグラフィ(DaTSCAN)検査が有用である.

・甲状腺機能亢進症などによる振戦の鑑別のためには血液検査が必要となる.

・気管支拡張薬(β刺激薬),抗てんかん薬(バルプロ酸),抗精神病薬,炭酸リチウム,免疫抑制薬(シクロスポリン,タクロリムス),副腎皮質ステロイドなどによる薬剤誘発性振戦の鑑別のために,服薬歴の聴取が重要である.

◆治療方針

 薬物治療は,既存のαβ遮断薬,β遮断薬,抗てんかん薬,抗不安薬などを用いる.薬物治療の効果がみられない場合は外科治療を検討してもよい.日本神経治療学会の「標準的神経治療:本態性振戦」も参照されたい.

A薬物療法

Px処方例 下記の薬剤を症状に応じて適宜用いる.

1)アロチノロール塩酸塩錠(10mg) 1回1錠 1日2回 朝・夕食後.1日10mgから開始し,効果不十分な場合は1日20mgに増量する.最大量は1日30mg

2)プロプラノロール(インデラル)錠(10mg) 1回1錠 1日3回 毎食後.1日30~60mgから開始し,効果不十分な場合は漸増する.最大量は1日120mg保外

3)プリミドン細粒 1日25mg(成分量として)を1~2回に分服から開始,眠気,めまいの副作用に注意しながら漸増(通常は1

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