今日の診療
治療指針

口部ジスキネジア
oral dyskinesia
前田哲也
(岩手医科大学教授・脳神経内科・老年科)

頻度 あまりみない

ニュートピックス

・バルベナジンは2021年3月承認申請され,2022年5月に薬価収載.同6月発売開始された.

治療のポイント

・特発性,遅発性,2次性に分けられ治療方針が異なる.

・抗精神病薬など薬剤性が多いため,遅発性を念頭において治療方針を立てる.

・2次性の場合は原疾患の治療も検討する.

◆病態と診断

A病態

・特発性,遅発性,2次性に分類され,病理学的には特発性で有意に線条体の小型神経細胞密度が低下し,遅発性は軽度とされる.

・抗精神病薬の長期使用に伴う遅発性の頻度が高く,フェノチアジン系薬剤は最も古くから報告があり,ほかにメトクロプラミド,抗うつ薬などがある.

・歯科口腔疾患や脳血管障害などに2次性に伴うことがある.

・明らかな原因が除外された場合は特発性とされる.

B診断

・口すぼめや開閉,舌の出し入れや舌なめなど,絶え間なく繰り返す不定な異常運動が診断上の特徴である.

・形容上のみならず発語や食事など生活機能に困って受診することが多い.

・抗精神病薬など治療歴の詳細がきわめて重要である.

・重症度診断には異常不随意運動スケール(AIMS:abnormal involuntary movement scale)が使用される.

◆治療方針

 急な症状出現では,直近の変更薬剤の中止あるいは病前復帰の検討を行う.抗精神病薬に関して,「統合失調症薬物治療ガイドライン」では減量しない,あるいは非定型薬へ変更することが望ましいとしているため連携が必要である.薬物療法のエビデンスは不十分だが,バルベナジンが2022年に発売された.2次性では原因病態の排除を優先し,歯科口腔疾患では治療介入が有効なことがある.パーキンソン病治療薬のジスキネジアは全く治療方針が異なるため,「パーキンソン病の内科的治療」の項()参照のこと.

A薬物療法

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)ハロペリドール(セレネー

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