今日の診療
治療指針

特発性正常圧水頭症
idiopathic normal pressure hydrocephalus(iNPH)
大道卓摩
(京都府立医科大学・脳神経内科)

頻度 割合みる(高齢者ではよくみる)

GL特発性正常圧水頭症診療ガイドライン 第3版(2020)

治療のポイント

・診断後早期にシャント術を行うことが望ましい(特に併存疾患を有しない症例,タップテスト陽性の症例).

・シャント術後の合併症が疑われれば,脳外科専門医へ相談する.

・iNPHと臨床診断できる症例でも,神経変性疾患,脳血管障害,または脊椎疾患などの併存に注意を要する.

◆病態と診断

A病態

・正常圧水頭症(NPH)は,先天性水頭症,家族性NPH,くも膜下出血や髄膜炎に続発する2次性NPHと,そのような原因疾患がない特発性NPH(iNPH)に分類される.

・特発性正常圧水頭症(iNPH)の病因は脳脊髄液動態の異常と考えられているが,その病理は明らかではない.

B診断

・60歳以上で,歩行障害・認知障害・尿失禁の3徴の1つ以上が緩徐に進行するときに疑われる.

・脳室拡大,シルビウス裂拡大,高位円蓋部の脳溝・正中部の脳溝狭小化〔DESH(disproportionately enlarged subarachnoid-space hydrocephalus)所見〕を脳CT・MRI画像所見で認める場合,歩行障害があり脳脊髄液の圧・性状が正常であればprobable iNPHと診断できる.

・DESH所見や歩行障害が明らかでない場合は,タップテストを診断に用いる.

◆治療方針

 治療の目的は,歩行障害・認知障害・尿失禁の改善であり,シャント術が有効である.有効な薬物療法は報告されていない.

Aシャント術

 脳室-腹腔(VP)シャント術または腰部くも膜下腔-腹腔(LP)シャント術が選択されることが多い.圧可変バルブの使用が主流であり,術後経過によって設定圧の変更を行うことがある.シャント術後の合併症(感染,シャント機能不全,脳脊髄液過剰流出による頭痛,硬膜下血腫・水腫など)が起こりうる.

B保存的加療

 シャント

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