頻度 あまりみない
治療のポイント
・安静臥床,飲水やカフェイン摂取,末梢輸液などの保存的治療を優先する.
・改善がない場合には,硬膜外腔自家血注入療法〔ブラッドパッチ療法(EBP)〕を行う.
◆病態と診断
A病態
・脳脊髄液の漏出や産生低下により頭蓋内圧が低下しているために起立に伴い脳が下垂し,頭蓋内の感覚神経や架橋静脈などの痛覚感受性組織の牽引や低頭蓋内圧を補うための血管拡張によって頭痛が生じるとされる.
・「国際頭痛分類第3版」(ICHD-3,2018年)には,頭痛は起立性頭痛で,通常,頸部痛,耳鳴,聴力変化,光過敏や悪心を伴い,脳脊髄液圧の正常化もしくは脳脊髄液漏出の閉鎖により頭痛は改善すると記載されている.
B診断
・わが国では,低髄液圧による頭痛の診断にはICHD-3の診断基準が用いられ,低髄液圧(60mmH2O)あるいは画像検査における脳脊髄液漏出の証拠のいずれかまたは両方となっている.
・画像検査は診断に有用で,頭部MRIでびまん性硬膜肥厚や硬膜造影効果,硬膜下血腫,小脳扁桃下垂や下垂体腫大がみられる.脳脊髄液の漏出があると,CTミエログラフィではくも膜下腔と連続する硬膜外造影剤漏出,MRミエログラフィでは穿刺部位と連続しない硬膜外水信号病変,脳槽シンチグラフィでは片側限局性RI異常集積などの所見がみられる.
◆治療方針
安静臥床,飲水や末梢輸液の水分補給,腹帯などの保存的治療を優先する.薬剤としては,カフェインやテオフィリン製剤,五苓散などの漢方を用いることもあるが,十分なエビデンスはない.改善がない場合にはEBP(epidural blood patch)を行う.
A保存的治療
保存的治療は数日から4週間程度実施する.
Px処方例 下記1)または2)を用いる.禁忌事項がなければ3)を併用してもよい.
1)乳酸リンゲル液(ラクテック薬)注 1日1,000~2,000mL 点滴静注
2)