頻度 あまりみない
GL慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー,多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2013
◆病態と診断
A病態
・感覚障害を伴わない左右非対称性で上肢遠位部優位の筋力低下と,筋萎縮を主徴とする後天性慢性脱髄性末梢神経疾患である.
・海外の研究では,本疾患の有病率は人口10万人あたり0.6人である.わが国における本疾患の頻度は筋萎縮性側索硬化症の1/20であり,有病率は人口10万人あたり0.3人と推定されているが,施設によっては診断に至らない患者も多いと考えられている.
・約半数の患者で血清中の抗IgM-GM1抗体が認められ,ランヴィエ絞輪部近傍の髄鞘や軸索膜に発現しているGM1を標的とした自己免疫性の機序が推測されている.
B診断
・緩徐進行性または階段状に進行する局所性もしくは非対称性の筋力低下を呈する.
・上肢優位の障害,罹患肢における腱反射の減弱または消失,脳神経障害を欠くこと,罹患肢における筋けいれんや線維束性収縮,および免疫グロブリン大量静注(IVIg:intravenous immunoglobulin)療法が有効であることは臨床的に本疾患を支持する所見となる.
・診断を支持する検査所見として,血清中の抗IgM-GM1抗体陽性,脳脊髄液の蛋白上昇,および画像検査での神経腫大がある.
◆治療方針
自己免疫性の機序が推測されているが,有効性が確立している治療法はIVIgのみである.副腎皮質ステロイド薬はむしろ増悪させることがあり,本疾患に対する治療薬として推奨されない.IVIgの有効性は症例によって異なり,長期寛解を得られる例,効果が一時的で維持療法を要する例,無効例などさまざまである.
A初回・再増悪時治療
Px処方例