今日の診療
治療指針

前頭側頭葉変性症
frontotemporal lobar degeneration(FTLD)
數井裕光
(高知大学教授・神経精神科学)

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GL認知症疾患診療ガイドライン2017

ニュートピックス

・前頭側頭葉変性症(FTLD)の多くは65歳未満発症の若年性認知症であるが,令和4(2022)年度から「若年性認知症」が「治療と仕事の両立支援」の対象疾患となった.

治療のポイント

・緩徐進行性であるが,根本的治療薬はないため,介護者に心理教育を行い,適切に対応してもらうことが基本となる.早期診断と早期からの対応が重要である.

◆病態と診断

A病態

・大脳の前頭葉と側頭葉を中心に緩徐進行性の神経変性をきたす病態の総称で,神経病理学的には多彩な病態が含まれる.

・前頭葉,側頭葉の機能低下による人格変化脱抑制常同行動言語障害などの特徴的な症状を呈する.

B診断

・行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD:behavioral variant frontotemporal dementia),意味性認知症(SD:semantic dementia),進行性非流暢性失語症(PNFA:progressive non-fluent aphasia)に分類される.

・bvFTDでは社会的な常識や他者への配慮のない自己本位な行動,同じ物を食べる・同じ経路を周遊する(常同的周遊)などの常同行動などで診断する.SDでは,このような行動・心理症状とともに言葉の意味や物の名前が選択的にわからなくなる症状で,PNFAでは失構音,失文法,発語量の減少などで診断する.

・bvFTDでは前頭葉や側頭葉前方部の,SDでは側頭葉前方部の,PNFAでは優位半球のシルビウス裂周辺の萎縮や脳血流低下を頭部CT・MRI,脳血流SPECTで確認する.

◆治療方針

 脱抑制,焦燥,興奮,易怒性,常同行動などの行動・心理症状に対する治療が中心となる.SD,PNFAの言語障害を改善させることは困難である.

A特性に応じた適切な対応

 行動を無理に修正しようとすると暴力などに発展する

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