今日の診療
治療指針

てんかんによる精神症状
psychiatric symptoms in epilepsy
中川栄二
(国立精神・神経医療研究センター・特命副院長(東京))

GLてんかん診療ガイドライン2018

治療のポイント

・てんかん患者は高率に精神症状を伴い,うつ病,双極性障害,不安障害,心因性非てんかん性発作,神経発達症などの発症は,いずれも一般人口に比べて数倍程度頻度が高い.てんかん患者を診療する際には,てんかん発作だけではなく,併存する精神症状も含めた包括的な診断と治療が必要である.

・抗てんかん薬投与の選択は,併存する精神・神経症状を考慮した薬剤選択が必要である.一般的に,Na チャネル阻害作用薬は,気分調整作用として情緒を安定させる作用を併せもつため,易興奮性,衝動性,多動性,反抗性などの症状が併存している場合には有効である.一方,非Na チャネル阻害作用薬は,精神作用をきたしやすい薬剤があるので精神症状が併存している際には,少量から投与しゆっくり増量するなどの工夫が必要である.

◆病態と診断

・てんかん患者は高率に精神症状がみられるが,基盤にある神経機能障害,てんかん発作が直接関連するもの,てんかんの長期経過とともに生ずる種々の身体・心理的影響が要因として挙げられる.

・基盤にある神経機能障害として,頭部外傷,脳血管障害,脳炎など,てんかんの原因となるあらゆる疾患がこれに該当しうる.

・素因性の神経機能障害に由来するものとしては,知的能力症や神経発達症が該当する.

・てんかん発作と直接関連した精神症状は,一般に一過性の出現のことが多い.非けいれん性てんかん重積は,昏迷,時に錯乱などの精神状態を呈する.発作後精神病は,特に側頭葉てんかんに多く認められ,けいれん発作や,意識を失う発作が群発したのち,急速に,幻覚や妄想や感情の障害が現れる.

・てんかんの長期経過とともに生ずる身体・心理的影響として,てんかん発作を頻繁に繰り返す場合には二次的な脳障害が起こりうる.

・抗てんかん薬による精神症状の出現はしばしば認められる.薬物の作用として精神症状への影

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