今日の診療
治療指針

睡眠障害(不眠)
sleep disorder(insomnia)
仁王進太郎
(東京都済生会中央病院・心療科(精神科)医長)

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GL睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版(2019)

ニュートピックス

・長年使われてきた(非)ベンゾジアゼピン受容体作動薬に代わって,近年はメラトニン受容体作動薬,オレキシン受容体拮抗薬が処方可能となり,これらの薬剤にシフトしている.

・本邦では,諸外国に比べてベンゾジアゼピン受容体作動薬の処方が多いことが問題となっている.ベンゾジアゼピン受容体作動薬は短期間の使用はよいが,漫然とした継続使用は,依存,転倒,せん妄などさまざまな問題につながりうる.

治療のポイント

・そもそも不眠症であるかどうかを,必ず確認する(下記「診断」の項を参照).

・まず,薬物療法よりも先に(または少なくとも同時に)必ず睡眠衛生指導を行う.

・治療開始時に,治療のゴールを患者とよく話し合う.

・ベンゾジアゼピン系睡眠薬は漫然と使用しない.

・3剤以上の併用は行わない.

◆病態と診断

A病態

・睡眠とは,人間の大脳が,覚醒時に高度な活動をするために必要な管理技術である.

・不眠には,①過覚醒型,②リズム障害型,③睡眠恒常性障害型,の3タイプがある.

・過覚醒型は,不眠恐怖が強く,難治性である.

・リズム障害型は,夜型傾向が強く標準的な就寝時間帯では寝つけない.寝だめが目立つ.

・睡眠恒常性障害型は,長い昼寝,運動不足など睡眠のニーズに乏しい.

B診断

・下記の3条件が揃った場合に不眠症といえる.

1)寝付きが悪い(入眠困難),夜中に目が覚める(中途覚醒),早く目覚める(早朝覚醒).

2)日中の機能障害がある.つまり,精神運動機能の障害(注意,集中,記憶力の減退などがあり,社会的に問題がある),身体機能の障害(倦怠感,頭痛,消化器症状など),うつ状態(不安,抑うつ気分など)がある.

3)適切な睡眠環境下にある.つまり,寝室環境が騒音や室温で邪魔されていない,十分な睡眠時間がとれる環境にある.

◆治療方針

 不眠症治療には主に,睡眠

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