今日の診療
治療指針

成人の自閉スペクトラム症(アスペルガー障害を含む)
autism spectrum disorder(ASD)in adults,including Asperger's disorder
今村 明
(長崎大学大学院教授・作業療法学)

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ニュートピックス

・自閉スペクトラム症(ASD)の有症率は,従来1%程度といわれていたが,米国疾病予防管理センター(CDC)の2021年の報告では,8歳の時点で2.3%という調査結果が示されている.

治療のポイント

・診断を行う際には何らかの支援/治療につながることを前提とすべきである.そのため家庭や職場の環境を調整したり,就労支援事業所を活用したりすることも必要である.

・本人の抱える問題が周囲から理解されず,疎外感や自己不全感を抱いている人が多いため,まずは本人の特性について十分なアセスメントを行い,心理教育によってバランスのよい自己理解,周囲の理解をすすめる.

・ASDの中核症状に効果のある薬物は現時点で存在しないため,薬物療法は基本的には併存症に対して行われる.

◆病態と診断

・ASDは①社会的コミュニケーションの障害(思考や感情の共有の困難,非言語的コミュニケーションの困難,対人関係の発展・維持・理解の困難)と②限局的・反復的な行動や思考(常同的な行動・会話,こだわりの強さ・変化への抵抗,強度あるいは対象が異常な興味,感覚刺激に対する過敏・低反応・回避・没頭)の2つを特徴とする神経発達症(発達障害)で,これまで広汎性発達障害(自閉性障害,アスペルガー障害など)と診断されてきたものをほとんど含む診断概念である.

・男性に多いといわれているが,近年では女性のASDも多く診断されるようになっている.知的能力は最重度の遅れから平均以上までさまざまである.

・診断のためには,発達歴の聴取と現時点での特性の評価により,上記①,②が小児期から連続して存在することと,社会的,職業的,日常生活的などの領域の機能障害が確認されることが必要となる.表面的には困難さがわかりにくい症例も多いため,幼児期の健診や成人期のスクリーニング検査の結果が陰性であったり,家族からの情報が不十分であったりし

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