ニュートピックス
・「精神疾患を合併した,或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」が作成された(総論編:2020年,各論編:2021年).
治療のポイント
・周産期は精神疾患の発症・再発・悪化が生じやすく,自死および児の虐待の誘因になりうることを認識する.
・医療者と患者・家族が共同して方針を決めることが重要である.特に妊娠中・授乳中の薬物療法に関してはエビデンスに基づき,服薬のメリットとデメリットについて患者・家族に十分説明し,共同で方針を決める.
・精神疾患合併または既往歴がある女性が妊娠を希望する際,プレコンセプションケアに留意する.
・チームアプローチにより,出産・育児のサポート体制を構築する.
・産後の抑うつ状態の頻度は高いが,うつ病とともに双極性障害の抑うつ病相の可能性もあることに留意する.
◆病態と診断
・周産期はホルモンレベルおよび体循環血液量の変動,出産に伴う母としての役割の付与など,生物心理社会的な大きな変化を伴い,さらに妊娠中は催奇形性,授乳期は母乳移行への危惧も生じるため,精神疾患の発症・再発・悪化が生じやすい.
・周産期精神疾患を背景因子として,自死や児の虐待のリスクも生じるが,特にわが国の妊産婦死因の7割は自死によると報告されている.
・自死を遂げた妊産婦が有する精神疾患の約半数は産後に抑うつ状態を呈していたことから,わが国では2017年,エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS:Edinburgh Postnatal Depression Scale)を用いた健診事業が開始されている.ただし,EPDSはスクリーニング検査であることに留意する必要がある.
・周産期は双極性障害の発症・再発・悪化のリスクが高く,特に産後の抑うつ状態を呈する症例には双極性障害の抑うつ病相が混在している可能性が高いこと,治療方法もうつ病と双極性障害では異なることに留意して,過去の躁・軽躁病