頻度 あまりみない
治療のポイント
・症状から胸郭出口症候群(TOS)を疑い,かつ十分な鑑別診断を行ったうえで診断できることが重要である.
・真の神経性TOS(TN-TOS:true neurogenic TOS)は身体所見と神経伝導検査によって診断が確定できる.
◆病態と診断
A病態
・腕神経叢と鎖骨下動静脈が胸郭上部付近で圧迫を受けることが原因とされ,斜角筋三角,肋鎖間隙,小胸筋下の3か所での圧迫が報告されている.斜角筋三角や肋鎖間隙の先天的な狭窄を発症要因とする報告もある.
・TOSの分類と頻度では,神経性TOSが9割以上を占め,血管性TOSは1割未満とまれである.しかし,ここ最近の報告では,神経性TOSの大部分は疾患概念自体が疑問視されている.
・神経性TOSのうちTN-TOSのみが確立された概念であり,腕神経叢の下神経幹の障害を呈する.
B診断
・TOS全般の症状として頸部~肩,上肢の痛み,だるさ,しびれ,筋力低下を訴えることが多い.徒手検査法としてRoos test,Wright testは感度が高いが,正常な人や手根管症候群の患者でも陽性となるため,偽陽性に注意が必要である.
・TN-TOSでは母指球優位の手内筋萎縮と筋力低下を呈し,前腕内側にも感覚障害を伴うことがある.
・血管性TOSでは,患側上肢の浮腫,チアノーゼ,脈拍の低下,表在静脈の怒張などを呈する.
・X線やCTで下位頸椎や上位肋骨の形態を評価し,頸肋などの異常所見がないか確認する.造影CTやエコーで鎖骨下動静脈の形態を評価する.特にエコーでは斜角筋三角の形態だけでなく血流評価も可能である.
・神経伝導検査では,TN-TOSを確定診断することが可能である.
◆治療方針
上肢の挙上動作や重量物把持動作の回避や,姿勢矯正,頸部周囲筋のストレッチおよび筋力トレーニングを行う.これらを数か月行っても無効な場合は手術を考慮する.手術は他の