今日の診療
治療指針

鎖骨骨折
clavicle fractures
寺田忠司
(福山市民病院・整形外科統括科長(広島))

頻度 割合みる(日常診療において比較的遭遇する機会が多く,全骨折の2.6~5%,肩甲帯骨折の35~45%に発生する.骨幹部骨折が最多で約80%を占め,外側端骨折15%,内側端骨折5%である.小児では最多の骨折であり,多くは分娩骨折である)

治療のポイント

・多くの場合に保存治療が可能であるが,手術を要する症例を見逃さないことが重要である.

◆病態と診断

・転落,交通事故,コンタクトスポーツなどによる受傷が多い.

・鎖骨部への直達外力,肩外側部への強打によって発生する.

・胸鎖乳突筋と上肢重量による角状変形,大胸筋と僧帽筋による短縮が生じるため,骨幹部と外側端骨折では近位骨片が頭側に転位する特徴的な形態を呈する.

・急性期に受診することが多く,理学所見として鎖骨部の腫脹,変形,圧痛などから,診断は容易である.

・単純X線像は鎖骨正面像と尾側30度斜位像が骨折を確認しやすい.

・多発外傷例,高エネルギー外傷例では搬送時の胸部X線像でも診断が可能であり,呼吸器損傷(多発肋骨骨折,血気胸など),腕神経叢麻痺などの合併に注意を要する.

◆治療方針

A保存治療

 骨折部の転位が少ない(2cm以下)場合に適応となり,8の字包帯,スリング装具,三角巾などを約1~2か月間装着することによって骨癒合が得られるが,約15%に癒合不全が発生し,高度の転位,高齢,粉砕,喫煙などはリスクファクターである.多くが受傷時の転位形状のまま骨癒合するが,15~20mm以上の短縮は臨床成績が悪いため手術が勧められる.

B手術治療

 2cm以上の転位・短縮,100%転位,粉砕,Z字変形,開放骨折,多発外傷,神経血管損傷合併例などに対しては手術が勧められ,プレート固定,髄内固定,ワイヤー固定などが行われる.

■患者説明のポイント

・骨折部の転位が軽度であれば保存,高度であれば手術を推奨する.ただし,転位が軽度の場合でも,早期の社会復帰やスポーツ復

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