治療のポイント
・投球障害肩の多くはオーバーユースによるものである.
・損傷した局所のみの治療に終わらず,全身の運動機能回復にも努める.
・多くは保存的に治癒するが,進行したものには手術が必要となる.
◆病態と診断
A病態
・投球障害肩には,腱の障害である腱板損傷,上腕二頭筋腱長頭炎,上方関節唇の障害であるSLAP(superior labrum anterior and posterior)損傷などの病態があるが,これらは合併して発症することが多い.
・投げる動作(外転外旋位)の際に,関節内で腱板付着部が関節窩の後上方縁と衝突する現象を後上方インターナルインピンジメントとよび,繰り返しの投球動作により前方関節包が緩み,後方関節包が拘縮すると生じる.この状態では,上腕骨頭が肩甲骨関節窩に対する求心位を取れなくなり,骨頭が後上方に偏移してSLAP損傷が生じ,関節唇と衝突する腱板の付着部も損傷する.
・さらに上腕骨頭を押さえ込む作用をもつ上腕二頭筋腱長頭にも過負荷がかかり,炎症が生じ痛みの原因となる.
・少年期(小学高学年から中学生)には,上腕骨近位端骨端線の障害であるリトルリーガーショルダーを発症することもある.
B診断
・野球歴,投球側,発症時期,有症状期間,痛みが生じる肢位などを丁寧に問診する.
・圧痛点,可動域,筋力,筋萎縮などの臨床所見,および単純X線所見を確認する.
・肩外転外旋位から腕を後下方にさげることで痛みが出れば,SLAP損傷を疑う.
・SLAP損傷を疑えば,関節側腱板不全損傷が生じている可能性も高いので,MRIを撮影して確認する.
◆治療方針
確実な診断に基づき,損傷部位のみでなく,その病態を解消することに努める.
投球障害肩と診断がつけば,3~4週間の投球休止期間を設定し,拘縮があればストレッチ指導を行い,インナーマッスル(腱板筋,特に棘上筋)の強化を行う.さらに肩関節だけでなく,肘