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治療のポイント
・人工骨頭置換術(HHR)は肩甲骨関節窩の浸食が発生し,疼痛の残存や長期に可動域制限が生じることがあるが,リバース型全人工肩関節置換術(RSA)へのコンバージョンは簡便.
・全人工肩関節置換術(TSA)はほぼ正常の機能回復が得られるが,15年以上の長期にインプラントが生存するかが不明.
・RSAは高齢者の腱板断裂性関節症に適応となり,疼痛改善の満足度は非常に高いが,挙上および外旋可動域の改善は不十分で重大な合併症が多い.
◆病態と診断
A変形性肩関節症
・1次性もしくは2次性に肩関節面軟骨の浸食が生じ,上腕骨頭および肩甲骨関節窩が変形し,肩や上腕部の疼痛および挙上や内・外旋可動域が制限され,日常生活動作に多大な障害が発生する.
・2次性の原因には外傷(手術後を含む),感染,神経病性関節症(シャルコー関節症),ステロイド注射後,上腕骨頭壊死,急速破壊性肩関節症などがある.
・腱板が機能的に残存している変形性肩関節症では,肩関節の可動域は制限されているものの40~50度しか挙上できないということはまれで,外旋のラグ(自動可動域と他動可動域に差)があることは少ない.
・X線:肩関節裂隙の狭小化,上腕骨頭の骨棘を認め,CTが有用.
・MRI:腱板の連続性があり,上腕骨頭,肩甲骨関節窩の軟骨層の広範な消失と軟骨下骨の骨硬化による信号変化を認める.
B腱板断裂性関節症
・腱板が広範囲に断裂し,偽性麻痺(他動挙上は100度以上可能なのに,あたかも腋窩神経麻痺があるかのように20~30度しか挙上できない)および外旋のラグと著明な筋力低下を認める.
・X線:上腕骨頭は健側に比較し肥大化,上方変位,大結節の変形(femoralization:角が取れて丸くなり大腿骨頭様にみえる)を認める.
・MRI:腱板断裂と断裂筋の高度の萎縮,脂肪浸潤を認める.
◆治療方針
A保存的治療
日常生活のうえでは痛