◆病態と診断

A病態

・肘関節の安定性は主に腕尺関節，内側側副靭帯（MCL：medial collateral ligament），外側側副靭帯（LCL：lateral collateral ligament）によって得られる．さらに橈骨頭，前方関節包，前腕筋群が二次的な安定機構として働いている．これらの支持機構が破綻し肘関節が不安定になった状態を，肘関節不安定症と称する．

・外傷による急性のものや，スポーツ障害や非外傷（内反肘変形に伴う後外側回旋不安定症など）による慢性のものに分類される．

・急性の外傷性肘関節不安定症には，軟部組織のみの破綻である単純性肘関節不安定症（simple elbow instability）と，軟部組織に加え骨性構造の破綻を伴う複合型肘関節不安定症（CEI：complex elbow instability）がある．CEIは肘関節脱臼に橈骨頭・頸部骨折および鉤状突起骨折を伴うterrible triad injuryによる後外側回旋不安定症（PLRI：posterolateral rotatory instability），鉤状突起前内側骨片にLCL損傷を伴う後内側回旋不安定症（PMRI：posteromedial rotatory instability），肘頭脱臼骨折，Monteggia脱臼骨折など形態はさまざまである．

B診断

・外傷性では，受傷機転や受傷時の肢位を聴取するとともに，腫脹や圧痛，皮下出血の部位や開放創の有無を確認する．神経血管損傷やコンパートメント症候群，隣接関節（肩関節や手関節）の合併損傷に