治療のポイント
・既往歴の聴取時に人工膝関節全置換術や骨折などの手術歴がないかも確認する.
・腫脹,皮下出血の有無,発赤,開放創などがないか脱衣させた状態で視診する.
・触診で膝蓋跳動があれば,膝関節穿刺(→,「関節穿刺」の項参照)をして関節内の液体を採取し,色や性状,脂肪滴の有無を確認する.
・膝関節の単純X線は3方向(正面,側面,軸位)撮像し,必要に応じてCTやMRIを追加する.
・膝関節周囲の骨折は手術適応となることが多く,神経・血管損傷や靭帯・半月板損傷を合併している可能性もあり,整形外科専門医へコンサルトすることを躊躇しない.
本項では膝関節周囲の骨折を「Ⅰ.大腿骨顆部骨折」「Ⅱ.膝蓋骨骨折」「Ⅲ.脛骨プラトー骨折」「Ⅳ.人工膝関節全置換(TKA:total knee arthroplasty)周囲骨折」の4つに分けて述べる.
Ⅰ.大腿骨顆部骨折
直達外力が加わるか,捻りの力で生じる.膝関節内に及ぶ骨折や転位が大きい骨折は手術適応となるが,患者の年齢や既往症,活動性に応じて治療方針は決定される.固定法としてロッキングプレート,スクリュー,髄内釘,創外固定などがあり,骨脆弱性の有無や骨折部位により使い分ける.診断後は大腿から下腿まで膝関節軽度屈曲位でのシーネ固定,もしくはニーブレースを装着する.
Ⅱ.膝蓋骨骨折
直達外力や大腿四頭筋による牽引などの介達外力により生じる.転位のない縦骨折は保存治療の適応で,シーネもしくはニーブレース固定を行い,痛みに応じて荷重を許可する.横骨折や粉砕骨折の場合は,膝蓋骨に付着する大腿四頭筋腱や膝蓋腱による牽引力で転位しやすいため手術適応となる.手術はキルシュナー鋼線と軟鋼線を用いたテンションバンドワイヤリングやスクリュー固定などが一般的である.
Ⅲ.脛骨プラトー骨折
膝関節に過度の内反・外反力が加わったり,関節面に軸圧が加わったりして生じる.関節面の