頻度 よくみる(おおむね人口の1%前後)
GL腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021改訂第3版
治療のポイント
・多くのケースで症状の自然軽快が期待できる疾患であり,第1に保存療法を考慮する.
・保存療法に抵抗性の症例に手術療法や椎間板内酵素注入療法が検討される.
◆病態と診断
A病態
・男性にやや多く,好発年齢は20~40歳代であるが小児から高齢者まで幅広い年代に発症しうる.好発椎間はL4/5およびL5/S1であり,変性した髄核が線維輪や後縦靭帯を穿破して神経組織を圧迫し,神経組織周囲に炎症を惹起する病態である.
・椎間板ヘルニアは自然退縮することも多く,その機序にはマクロファージやサイトカインなどが関与しているとされる.
B診断
・腰痛,片側あるいは片側優位の下肢痛を愁訴とすることが多い.下肢伸展挙上テスト(SLRT:straight leg raising test)・大腿神経伸展テスト(FNST:femoral nerve stretching test)などの疼痛誘発テスト,障害神経根に一致した筋力低下・感覚障害・深部腱反射低下などの身体所見と,画像所見を合わせた総合的判断が正確な診断のために重要である.
・画像検査ではMRIで椎間板の脊柱管内突出と神経組織の圧迫を確認でき,診断的意義が高い.
◆治療方針
腰椎椎間板ヘルニアは自然退縮する症例が多く,基本的に保存療法(薬物療法,硬膜外副腎皮質ステロイド薬注入療法,選択的神経根ブロックなど)をまず行い,一定期間経過しても症状の改善が得られない場合に手術を検討する.ただし,比較的まれであるが下垂足や膀胱直腸障害などの重度の神経症状を伴うケースでは,できるだけ早期に手術を行うことがある.
現状では,椎間板内酵素注入療法は保存療法と手術療法の中間的な治療法と位置づけられる.
A保存的治療
1.薬物療法
疼痛に対して非ステロイド性抗炎症薬(NSAI