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治療のポイント
・脂漏性皮膚炎には,乳児に生じるものと成人にみられるものがあることを理解する.
・ステロイド外用薬や抗真菌外用薬を使用する.頭部や顔面,間擦部など部位によって外用薬を使い分ける.
・脂漏性皮膚炎の症状は,乾癬や接触皮膚炎と区別がつきにくいことがある.治療法は異なるので,適切な診断が重要である.
◆病態と診断
A病態
・皮脂腺の分布が多い,いわゆる脂漏部位に好発する.
・脂漏性皮膚炎は,AIDS患者や悪性腫瘍,臓器移植後の患者に高頻度にみられる.そのため,病態に免疫学的な機序が考えられている.加えて,マラセチア属の関与も指摘されていることから,マラセチア属由来の脂質抗原による炎症という考え方もある.
・ふけ症は,頭部粃糠疹ともよばれ,頭皮の角質が剥がれ落ちることで生じる.
B診断
・脂漏性皮膚炎は,乳児と成人にみられるタイプがあり,皮膚所見が診断上重要である.乳児では,被髪頭皮や眉毛部からはじまり,耳介や顔面特に鼻部にも生じる.潮紅がみられ黄褐色調の痂皮も伴う.耳介や鼻部では細菌感染に注意する.成人では被髪頭部をはじめとした脂漏部位に落屑性紅斑がみられる.皮疹は,腋窩や外陰部にも生じる.早期病変では毛包に一致した丘疹もみられるが,漿液性の丘疹や小水疱,びらんなどは生じない.
・乳児の場合,ほとんどは自然治癒するが,成人では慢性的な経過をとる.
・頭部に生じた場合には,乾癬との鑑別を要する.皮膚病理組織学的に,不全角化や表皮の肥厚がみられ,乾癬の組織像に似ている.また,KOH直接鏡検を行い,真菌感染を否定する.
・ふけ症は,軽度であれば生理的にも起こりうるが,ふけが多い場合は,脂漏性皮膚炎や乾癬など他の皮膚疾患を疑う.
◆治療方針
ステロイド外用薬や抗真菌薬の外用を行う.被髪頭部ではローションを使用する.瘙痒の強いときは抗ヒスタミン薬も併用する.ミコナゾール硝酸塩が配合された
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