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治療のポイント
・多形滲出性紅斑では主な原因である感染症,薬疹をまず念頭におく.
・環状紅斑では内臓悪性腫瘍の除外のため全身検索を必要とすることがある.
◆病態と診断
A病態
1.多形滲出性紅斑(多形紅斑:EM)
・感染症あるいは薬剤の2つが主な原因として発症する.まれなものでは内臓悪性腫瘍や膠原病などに伴うものがあるが,原因不明のものも多い.
・原因となるのは単純ヘルペスウイルス(HSV)やマイコプラズマ,あるいは溶連菌感染である.最近ではCOVID-19感染や同ワクチン接種後に発症する報告も散見される.
・HSV感染などが原因の場合は,時に感染のたびに発症を繰り返す再発性EMとなることもある.
・薬剤が原因の場合は抗菌薬,NSAIDsなどによることが多い.
2.環状紅斑
・小紅斑が遠心性に拡大しつつ中心部が消退傾向を示す疾患の総称.
・遠心性環状紅斑や感染症・膠原病・悪性腫瘍に伴うものなどがある.
B診断
・臨床像,皮膚病理組織像を総合して診断する.
1.EM
・典型例では四肢優位に分布する三層構造の標的状病変が癒合し拡大する.
・皮膚のみに生じるEM minorと,発熱を伴い軽度の粘膜病変を認めるEM majorに分けられる.EM majorは重症薬疹であるスティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS)とは別の疾患概念である.
2.環状紅斑
・遠心性環状紅斑の場合は四肢・体幹部に数cmほどの紅斑が出現し,次第に遠心性に拡大し数週間ほどで消退する.
◆治療方針
AEM
原因となる薬剤があればすみやかに中止する.感染症が原因であればその治療を並行する.基本的には外用治療などの支持療法を行うが,EM majorの場合は入院のうえ,ステロイド全身投与を検討する.
B環状紅斑
悪性腫瘍に伴う匍行性迂回状紅斑や,グルカゴノーマに伴う壊死性遊走性紅斑,ライム病に伴う慢性遊走性紅斑などは原疾患の治療自体が治療となる.
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