今日の診療
治療指針

表皮水疱症
epidermolysis bullosa
石井文人
(久留米大学准教授・皮膚科学)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・皮膚科専門医へコンサルトし,各種検査により正確な病型診断を行う.

・対症療法が主体で,処置には創傷被覆材を活用する.

・劣性栄養障害型では,難治性潰瘍部における有棘細胞癌の発症に注意する.

・一部の病型には,ヒト(自己)表皮由来細胞シートを用いることができる.

◆病態と診断

A病態

・皮膚の先天的な脆弱性を示す.生下時より軽微な機械的外力で容易に皮膚や粘膜に水疱やびらんを生じる.

・皮膚の表皮真皮境界部に存在する構造蛋白をコードする遺伝子の変異による.

・①単純型,②接合部型,③栄養障害型と④キンドラー症候群の4型に大別される.病型により遺伝形式,臨床症状,重症度,合併症,臨床予後が異なる.

・後天性表皮水疱症は栄養障害型の原因蛋白であるⅦ型コラーゲンに対する自己免疫性水疱症であり,表皮水疱症とは異なる.高齢者に好発する.

B診断

・臨床症状,遺伝形式,病理組織検査,蛍光抗体法による基底膜部蛋白のパネル染色,電子顕微鏡検査,遺伝子解析により総合的に診断する.

◆治療方針

 根治的治療法はなく対症療法が主体となる.軟膏を主とする局所療法や創傷被覆材を使用し,全身管理を施す.合併症はQOLを著しく低下させるものが多く,疼痛,瘙痒に対するケアや,指趾の癒着や食道狭窄をきたすことがあることに留意する.

 単純型の多くは常染色体顕性遺伝形式をとり,主にケラチン5または14が責任遺伝子である.比較的軽症例が多い.

 接合部型は常染色体潜性遺伝形式をとり,ラミニン332,ⅩⅦ型コラーゲン,α6・β4 インテグリンなどが責任遺伝子である.爪の変形や歯牙の異常などが診断の参考となる.

 栄養障害型は,Ⅶ型コラーゲンが責任遺伝子であり,常染色体顕性遺伝と常染色体潜性遺伝形式がある.瘢痕,稗粒腫,爪の変形や口腔・食道粘膜病変の有無などが診断の参考となる.

A外用療法

 皮膚の上皮化や感染症を考慮し

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