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産婦人科疾患 最近の動向
木村 正
(大阪大学大学院教授・産科学婦人科学)

AHPVワクチンの積極的接種勧奨再開

 ヒトパピローマウイルス(HPV)のなかで最も子宮頸癌発症の原因となる頻度の高い16型,18型に対するワクチンは,2013年接種部位以外の広範囲で持続する疼痛などの多様な症状を呈する女子などに十分な情報提供ができない状況にあったことから,国として積極的接種勧奨を差し控えるとする決定がなされた.定期接種は継続されたが,報道などによる国民の不安は大きく,接種率は対象年齢の1%未満に落ち込み,この政策に対しWHOなどの国際機関が日本を名指しで批判する事態となった.その後,ワクチン接種世代の疫学研究が日本でも進み,安全性に関しても特段の懸念が認められないことが明らかになり,2022年4月より接種対象者(小学6年生~高校1年生相当の女子)への積極的勧奨が再開され,ようやく通常の定期接種ワクチンの形を取ることになった.この間,2000~2005年度生まれの女性の多くが接種をしないまま対象年齢を超えているため,2022年4月~2025年3月までの3年間に限り公費によるキャッチアップ接種制度が設けられた1).性交開始後のHPVワクチン接種による子宮頸癌予防効果は思春期の接種に比べ劣るが,非接種群に比べると効果がみられている.これまでの2価(16,18型),4価(16,18 / 6,11型)に加え9価(16,18,31,33,45,52,58 / 6,11型)ワクチンも日本で上市されたが,現時点では9価は定期接種には用いられておらず,私費での接種となる.2価,4価ワクチンでは約70%,9価ワクチンでは約90%の子宮頸癌に予防効果があるとされるが,いずれもすべての子宮頸癌を予防できるわけではない.これまでと同様,子宮頸癌検診と並行して接種することで,将来,子宮頸癌は稀少癌となると予想される.日本でだけ,子宮頸癌に対する広汎子宮全摘術が盛んに行われているという

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