今日の診療
治療指針
産婦人科

早発卵巣不全,早発閉経
(premature)ovarian insufficiency(POI)/premature menopause
丸山哲夫
(慶應義塾大学准教授・産婦人科学)

頻度 よくみる(20代の女性で0.1%,30代の女性で1%)

ニュートピックス

・間葉系幹細胞や多血小板血漿の使用,あるいは薬物・機械的刺激により直接卵胞を活性化するなどして卵胞発育を促す研究的治療法が試みられている.

治療のポイント

・卵胞の枯渇によりエストロゲンが欠乏しているので,治療の基本はHRTになる.

・卵胞発育を促すさまざまな治療・管理が試みられているが,現時点でエビデンスのある治療法はない.

・挙児希望がある場合の選択肢として,養子や卵子提供が考慮される.

◆病態と診断

A病態

・卵胞の減少・枯渇により40歳未満卵巣性無月経と低エストロゲン状態になる.

・POIには,閉経(月経の永久停止)を呈する早発閉経と,卵胞発育の可能性のあるゴナドトロピン(Gn)抵抗性卵巣の2つが含まれるが,この両者の鑑別は困難である.

・約90%は原因不明で,約10%は染色体異常,自己免疫疾患,医原性処置(抗癌剤,放射線療法,卵巣手術など)などに起因する.

・抗癌剤のなかでは,アルキル化剤,白金製剤,アントラサイクリン製剤,タキサン製剤などが卵巣毒性を有する.

・まれに卵胞発育・排卵が起こり,5~10%が自然妊娠に至る.

B診断

・40歳未満で3か月以上の無月経血中Gn(LH:luteinizing hormone,FSH:follicle stimulating hormone)高値,および血中エストラジオール低値により診断される.

・補助的に,血中抗ミュラー管ホルモン(AMH:anti-Müllerian hormone)値や超音波検査による胞状卵胞数(AFC:antral follicle count)が用いられる.

・月経不順を経てPOIに移行することも少なくないので,月経不順に対してもPOIを念頭においた対応を考慮する.

◆治療方針

A挙児希望がない場合

 卵巣欠落症状の改善や骨粗鬆症などの予防のためにホルモン

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?