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治療指針
産婦人科

閉経後骨粗鬆症
postmenopausal osteoporosis
寺内公一
(東京医科歯科大学教授・茨城県地域産科婦人科学)

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GL骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版

GL産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2020

治療のポイント

・骨密度のみに基づいて薬物治療を開始または変更するのではなく,骨代謝マーカーの値などを含めて病態を判断し,合理的な薬剤選択を行う.

◆病態と診断

A病態

・若年期に,遺伝および栄養・運動などの生活習慣に基づいて獲得される最大骨量に個人差が生じる.

・閉経によって血清エストラジオール濃度が低下すると,T細胞による炎症性サイトカイン産生の増加など,さまざまな機序により,骨芽細胞および骨細胞によるRANKL(receptor activator of NF-κB ligand)産生が増加し,そのため破骨細胞による骨吸収が亢進する.

・骨吸収の亢進に伴って骨芽細胞による骨形成も亢進すると(高骨代謝回転),単位あたりの骨吸収に要する時間が3週間であるのに対し骨形成には3か月間と長い時間が必要であるため,骨密度および骨質(微細構造など)が低下し,微小な外力によって骨折しやすい状態となる.

B診断

・低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患,または続発性骨粗鬆症の原因がなく,①椎体または大腿骨近位部の脆弱性骨折がある,②その他の脆弱性骨折があり,骨密度が若年成人平均値(YAM:young adult mean)の80%未満,③骨密度がYAMの70%以下または-2.5SD以下,のいずれかである場合に原発性骨粗鬆症と診断する.

・原発性骨粗鬆症の診断基準に合致しない場合でも,骨密度が70%より大きく80%未満であって,FRAX 10年間の骨折確率(主要骨折)が15%以上であるか,または大腿骨近位部骨折の家族歴がある場合には,薬物治療を開始する.

・椎体骨折の診断には形態骨折が含まれるので,骨粗鬆症を疑ったら必ず胸腰椎単純X線を撮影する.

・骨密度は原則として腰椎(L1~4またはL2~4)または大

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