今日の診療
治療指針
産婦人科

前置胎盤・低置胎盤
placenta previa,low-lying placenta
松崎慎哉
(大阪国際がんセンター・婦人科副部長)

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ニュートピックス

・母体年齢の上昇,帝王切開率の増加,体外受精の増加など,前置胎盤のリスク因子を有する妊婦が増加している.

・前置胎盤は癒着胎盤の最も強い危険因子である.近年癒着胎盤の頻度も上昇している(約0.3%).

治療のポイント

・癒着胎盤を合併している場合は術中大量出血をはじめとした母体合併症が上昇するため,癒着胎盤の除外は重要である.

・前置胎盤(約50倍のオッズ比),帝王切開既往,体外受精,子宮動脈塞栓術既往,前回癒着胎盤は癒着胎盤の強い危険因子(オッズ比は約10倍)である.子宮手術既往,母体高年齢なども危険因子である.

・分娩時に初めて癒着胎盤の診断がついた場合は大量出血に対する十分な準備がなされていないことが多い.末梢静脈血管路の複数本の確保,輸血の確保,応援医師の要請など,症例に応じてすみやかに対応を行う.

・癒着胎盤を合併していない場合でも以下の点に注意を要する.①平均分娩週数は35~36週,②早産を約50%に認めるため新生児科医との連携が重要,③分娩時大量出血に備え輸血の準備,麻酔科医との連携も重要である.

・低置胎盤では胎盤辺縁と内子宮口の距離が0~10mmである場合の経腟分娩の成功率は約40%であり,11~20mmである場合は約80%となる.経腟分娩を試みる場合は前置血管がないか注意する.

・低置胎盤の数%に前置血管を合併する.未診断の前置血管で経腟分娩を行った場合は新生児の致死的合併症を発生しうる.

◆病態と診断

A病態

・胎盤が子宮体下部に形成され,胎盤が内子宮口を覆う状態である.前置胎盤では内子宮口を胎盤が覆っているため経腟分娩が困難である.低置胎盤は胎盤辺縁が内子宮口を覆っていないが,内子宮口との距離が20mm以内であることを目安とする.

・子宮体下部は収縮不全をきたしやいため,前置胎盤,低置胎盤ともに分娩時出血が多いことが特徴である.

B診断

経腟超音

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