今日の診療
治療指針
産婦人科

癒着胎盤
placenta accreta spectrum
三浦清徳
(長崎大学大学院教授・産科婦人科学)

治療のポイント

・妊娠中に癒着胎盤と確定診断することは困難であるが,前置胎盤などのリスク因子を有する妊婦に対しては,妊娠中期以降の画像診断で癒着胎盤の可能性を予測し,原則的に高次医療施設での妊娠・分娩管理が望ましい.

・急な出血による緊急手術や制御不能な出血など,いかなる状況にも対応できるように輸血の確保や止血対策など多職種(産婦人科,小児科,放射線科,麻酔科など)が連携して準備し,その治療方針について患者説明を行う.

◆病態と診断

A病態

・癒着胎盤は,胎盤絨毛が子宮筋層に癒着し胎盤剥離困難な状態である.病理学的には,絨毛が脱落膜を介在することなく子宮筋層へ侵入している程度により,単純癒着胎盤(placenta creta,vera or adherenta:絨毛が子宮筋層表面に癒着),侵入胎盤(placenta increta:絨毛が子宮筋層内に侵入),および穿通胎盤(placenta percreta:絨毛が子宮筋層から子宮漿膜面を越えて膀胱などの周辺臓器に到達)に分類される.

・癒着胎盤の頻度は,帝王切開率の上昇に伴い増加しており,1/533~730という報告もある.

・癒着胎盤のリスク因子として,前置胎盤,子宮内膜にダメージを与える手術既往(帝王切開の既往,子宮内膜掻爬術など),高年妊娠,体外受精・胚移植妊娠などが知られている.特に,帝王切開の既往は癒着胎盤の主なリスク因子であり,その既往回数の増加に伴い発症リスクも増加する.例えば,帝王切開既往のない前置胎盤では3%であるが,その既往回数が4回以上では67%という報告もある.

・癒着胎盤は,母体にとって大量出血のリスクが高く,DIC,多臓器不全,大量輸血,動脈塞栓術,子宮摘出術,母体死亡の可能性もある.一方,胎児にとっては早産のリスクが高い.

B診断

・癒着胎盤は摘出子宮の病理検査で確定診断され,分娩前の診断は難しい.特に本疾患の低

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