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治療のポイント
・わが国において胎児が骨盤位の場合は,大多数の施設で選択的帝王切開術が行われている.
・骨盤位による帝王切開術を回避するために,骨盤位矯正術がある.矯正術には,胸膝位,ポジショニング,鍼灸,骨盤位外回転術があるが,医学的根拠がある方法は,外回転術である.
・胎児が横位の場合は,経腟分娩が不可能であるため,帝王切開が選択される.
◆病態と診断
A病態
・骨盤位とは,胎内で骨盤部が先進する位置にある状態である.先進部の種類により,殿位(単殿位,複殿位),膝位(全膝位,不全膝位),足位(全足位,不全足位)に分類される.
・妊娠末期での骨盤位の頻度は全分娩の3~5%であり,そのうち殿位の頻度が最も高く75%を占めている.多胎妊娠,早産児,羊水過多,子宮奇形,狭骨盤の際に多くみられる.
B診断
・現在では,超音波断層装置を用い,先進部が非頭位であれば,骨盤位,横位と診断する.
◆治療方針
A分娩様式
2000年に多施設共同無作為試験では,「正期産骨盤位においては,選択的帝王切開術を選択したほうが経腟分娩を選択するより児の周産期予後がよい」という報告があった.この論文には議論の余地はあるが,これ以降,骨盤位の場合には,選択的帝王切開術を選択する施設が大多数である.帝王切開を回避するためには,経腟分娩を選択するか,骨盤位矯正術を行う.経腟分娩を行う場合は,骨盤位経腟分娩に習熟したスタッフが常駐しており,経腟分娩のメリットとデメリットを説明のうえ,妊婦に同意を得ていることが重要である.
B骨盤位矯正術
胸膝位,ポジショニング,鍼灸を行う施設もあるが,現在のところ医学的根拠はない.骨盤位外回転術は,成功すれば頭位となり経腟分娩が期待できる.しかし頻度は高くないが,外回転術による常位胎盤早期剥離,胎児機能不全を併発する可能性があるため,児が成熟した妊娠36週以降かつ緊急帝王切開が可能な