今日の診療
治療指針

新生児の低血糖
neonatal hypoglycemia
滝 元宏
(東京都立病院機構東京都立荏原病院・小児科医長)

治療のポイント

・血糖値の管理では,以下の3点が重要.

1)低血糖のリスクを有する児と健康な正期産児で,血糖測定の要否は異なる.

2)介入すべき血糖値は,出生後の継時的な変化を加味する.

3)症候性低血糖・無症候性低血糖を区別する.

・低血糖のリスクを有する児や低血糖を示唆する症状を認めた場合,出生後1~2時間以内には血糖測定を行い,安定するまで継続し,治療介入の必要性を評価する.

・出生3日以内の低血糖症の多くは高インスリン血症である.

◆病態と診断

A病態

・正常新生児の血糖値は生後1~2時間で30mg/dL程度と最低値になり,生後2~3時間までに上昇し安定する.これには,出生に伴う内分泌反応(出生後血糖の低下に伴うインスリン分泌の抑制,それによるアドレナリンやグルカゴン,副腎皮質ホルモンの上昇など)が関与している.

・低血糖にもかかわらず,インスリン分泌がみられる状態が高インスリン血症である.

B低血糖を起こすリスク

・早産児・低出生体重児,特にsmall for gestational age(SGA)児,糖尿病母体からの出生児,新生児仮死,呼吸障害などの児.

C症状

・易刺激性,異常な啼泣,哺乳障害,活動性低下,筋緊張低下,無呼吸発作,傾眠傾向,けいれん,多汗,多呼吸,頻脈,チアノーゼ,皮膚蒼白.

D診断

低血糖症状を認め,血糖<45mg/dLの場合,介入を行い,低血糖症状が改善することを確認する.

・無症状で低血糖のリスクを有する児には,血糖測定を行い,生後1時間で血糖<25mg/dL,生後2時間で血糖<40mg/dL,生後4時間以降で血糖<45mg/dLを介入の目安とする.

・低血糖時の検体で,血糖<50mg/dLでインスリン>1μIU/mLの場合,高インスリン血症を疑う.

◆治療方針

A糖補給

 下記1),2)の初期対応後,改善を認めなければ3)を施行する.

1)早期授乳開始

2)10%ブドウ糖液 1

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