今日の診療
治療指針
小児

小児の輸液・経口補水
intravenous fluid and oral rehydration therapy in children
植田育也
(埼玉県立小児医療センター・小児救命救急センター長)

GLエビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017 第Ⅰ部 小児急性胃腸炎診療ガイドライン

GLPediatric Advanced Life Support 2020(小児の2次救命処置 2020年版)

治療のポイント

・軽症~中等症の脱水症には経口補水を行う.

・ショックと判断したら急速輸液を行う.緩衝剤入りの等張晶質液10mL/kg(体重あたり)を5~10分かけて静脈内投与する.

・経口補水だけでは体内の水分量が維持できない場合は,維持輸液を行う.

・維持輸液の投与量は,1日あたりの水分の必要量および喪失量から概算するが,あくまで目安である.実際には,血清電解質,尿量をみながら調整する.

◆病態と診断

A病態

・小児で経口補水や輸液の適応となる病態は,自律的な水分摂取が不十分か,水分喪失の増加による体内の水分の欠乏状態である.一般的には脱水症が知られている.重症の脱水症では循環血液量減少性ショックをきたすことがある.

・臓器不全を伴う重症感染症である敗血症では,血管外の組織に血漿成分が漏出し,血管内容量が不足する.重症の敗血症では血液分布異常性ショックをきたすことがある.これらショック状態の小児には急速輸液が適応となる.

B診断

・まず病歴,身体所見〔意識状態,呼吸数,努力呼吸の有無,脈拍数,脈の触れ,手足の温かさ,毛細血管再充満時間(CRT:capillary refilling time),血圧〕から,ショックを診断する.ショックを認めたら,急速輸液を開始(方法については「治療方針」を参照)する.

・ショックではない場合は,さらに詳しい病歴聴取,身体所見〔体重,活気,体温,皮膚や粘膜の乾燥/湿潤/浮腫の有無,ツルゴール(turgor)低下の有無,尿の量/回数,外出血など〕や検査所見(血清Hb,Na,UN,Cr値や尿比重など)から,水分欠乏の原因を診断する.脱水症はこの代表であ

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