治療のポイント
・チアノーゼの増強と収縮期心雑音の減弱による早期診断が重要である.
・まず胸膝位にして酸素を投与し,次いで鎮静薬を用いる.
・改善しなければ,プロプラノロールやフェニレフリンを静注する.
・改善後は早期に専門施設にコンサルトし,手術の実施を検討する.
◆病態と診断
A病態
・低酸素発作または無酸素発作は,ファロー四徴をはじめ,右室流出路狭窄をきたす先天性心疾患(両大血管右室起始,三尖弁閉鎖,右室性単心室など)に出現する.
・右室流出路のれん縮により狭窄が悪化し,肺血流が低下する結果,チアノーゼの増強と不穏を呈する.
・新生児期より生後数か月の乳児期に好発し,哺乳,啼泣,入浴,排便,脱水,麻酔の覚醒時などが契機となる.
・アシドーシスや過呼吸が悪循環を惹起し,けいれん,意識消失,さらには死亡に至る例もある.
B診断
・チアノーゼが増強し,酸素飽和度が低下する.
・右室流出路の血流減少により,収縮期心雑音が減弱~消失する.
・心エコー検査では,右室流出路の狭窄の増強と血流の減少,右左シャントの増加を認める.
◆治療方針
A発作時の対応
1.初期対応
両膝を胸につける姿勢(胸膝位)で抱き,マスクを用いて100%酸素を投与する.
2.輸液
静脈ラインを確保し,細胞外液型輸液を急速静注する.血液ガス検査でアシドーシスがあれば,炭酸水素ナトリウムで補正する.
3.鎮静
興奮状態を抑制するため,鎮静薬を投与する.
Px処方例 下記のいずれかを用いる.
1)モルヒネ薬塩酸塩注 1回0.05~0.2mg/kg 静注または皮下注保外
2)ミダゾラム(ドルミカム薬)注 1回0.05~0.1mg/kg 静注 総投与量0.6mg/kgまで(筋注,経腸,点鼻などで投与することもある)保外
3)ケタミン(ケタラール薬)注 1回1~2mg/kg 静注または筋注
!注意 いずれの鎮静薬も呼吸抑制や血圧低下をきたす可能性がある.
4.β遮断薬
関連リンク
- 治療薬マニュアル2023/モルヒネ塩酸塩水和物《モルヒネ塩酸塩 アンペック モルヒネ塩酸塩》
- 治療薬マニュアル2023/ミダゾラム《ドルミカム》
- 治療薬マニュアル2023/ケタミン塩酸塩《ケタラール》
- 治療薬マニュアル2023/プロプラノロール塩酸塩《インデラル》
- 治療薬マニュアル2023/フェニレフリン塩酸塩《ネオシネジン》
- 治療薬マニュアル2023/溶性ピロリン酸第二鉄《インクレミン》
- 治療薬マニュアル2023/フェノバルビタール《フェノバール》
- 今日の救急治療指針 第2版/急性心不全
- 今日の救急治療指針 第2版/循環器疾患
- 今日の精神疾患治療指針 第2版/循環器疾患合併症
- 今日の小児治療指針 第17版/新生児遷延性肺高血圧症
- 今日の小児治療指針 第17版/低酸素発作