今日の診療
治療指針

眼内腫瘍
intraocular tumors
加瀬 諭
(北海道大学講師・眼科学)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・成人の眼内腫瘍は網膜腫瘍,ぶどう膜腫瘍が主体であり,眼科的所見に加え蛍光眼底造影検査,超音波検査,CTやMRI,核医学検査を適宜行い,的確な臨床診断を行う.

・その診断に基づき,適切な治療方針を検討する.

・治療の対象疾患としては,脈絡膜悪性黒色腫,脈絡膜血管腫,眼内リンパ腫,網膜血管芽腫,網膜血管増殖性腫瘍,転移性ぶどう膜腫瘍がポイントとなる.

・脈絡膜母斑,星状膠細胞性過誤腫は当面無治療で経過観察する.

◆病態と診断

A病態

・眼内のさまざまな組織構築が腫瘍の発生に関与しており,脈絡膜上腔に存在するメラノサイトや網膜グリア細胞,血管内皮細胞が腫瘍化する可能性がある.しかし,多くの眼内腫瘍の病態は十分に解明されていない.

B診断

・問診において腫瘍の既往歴,腫瘍に罹患した家族歴を聴取する.

・視力・眼圧測定,細隙灯顕微鏡検査,散瞳薬を使用しての眼底検査が必須である.

・眼内に隆起性病変がみられたら,眼内腫瘍の可能性を念頭におく.隆起性病変の色調に留意する.

・隆起性病変が充実性腫瘍であるか否か,ぶどう膜由来か否かを,超音波Bモードや光干渉断層計(OCT),超音波生体顕微鏡(UBM)で確認する.

・オーロラ状の硝子体混濁が主体で眼内リンパ腫の可能性が否定できない場合には硝子体切除術を行い,硝子体液の細胞診やインターロイキン10/6比の測定,免疫グロブリン重鎖遺伝子再構成の検索を行う.

・転移性虹彩腫瘍が疑われる場合には,27ゲージ針による穿刺吸引細胞診が有用である.

・インドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(ICGA)は脈絡膜血管腫の診断に有用で,早期の過蛍光所見が特徴的である.

・網膜血管芽腫では,フルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)で腫瘍への流入・流出血管が明瞭に確認でき,既往歴にフォン・ヒッペル・リンドウ病があるか確認する.

・網膜血管増殖性腫瘍は周辺部網膜に橙赤

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