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GL小児滲出性中耳炎診療ガイドライン2015年版
ニュートピックス
・COVID-19流行以後,小児OMEは著減している.マスク/手洗い/ソーシャルディスタンスなどにより,上気道感染に続く鼻副鼻腔・上咽頭の感染が減少,ひいてはOMEが減少したと考えられる.OME治療に,周辺器官の感染・炎症の制御が重要であることが,はからずも示されたといえよう.
治療のポイント
・本項では,小児OMEにつき記載する.
・発症後3か月間は経過観察・保存加療が勧められる.
・保存加療で改善せず,難聴が継続する場合,鼓膜チューブ留置術の対象となる.
・鼓膜の病的所見(著明な陥凹や癒着)では,より積極的に手術を考慮する.
・保護者の意向も治療方針に影響するため,保護者と意思決定プロセスを共有する.
◆病態と診断
A病態
・急性炎症を伴わずに中耳貯留液を認める状態.伝音難聴の程度は軽度から中等度までさまざまである.
・一次的な病因は,上気道や周辺器官(鼻副鼻腔・上咽頭)の感染である.アデノイド増殖症は細菌感染巣としてのバイオフィルム形成が,アレルギー性鼻炎では鼻粘膜腫脹よりもアレルギーによる炎症が,OMEとの関連で重要視されている.
・耳管機能障害による中耳陰圧化により,中耳貯留液は排出しにくくなり,鼓膜の病的所見を生じうる.
B診断
・気密耳鏡による鼓膜所見.
・遷延・増悪リスクの判定.集団保育や家庭内喫煙者の有無などの問診,周辺器官の所見の確認.
・難聴程度の診断.診察時の聴覚印象や家庭での様子,言語発達などより推察し,症例を選別して精密聴力検査機関に紹介する.
◆治療方針
A保存的治療
急性中耳炎後に遷延する無症候性の中耳貯留液は,発症3か月以内に75~90%が自然治癒するとされる.
1.薬物治療
a.OMEの改善
カルボシステインは,中耳貯留液の排液に加え,慢性副鼻腔炎の排膿にも適応がある.
Px処方例
L-カルボシステイ