今日の診療
治療指針

アデノイド増殖症,扁桃肥大
adenoid vegetation,tonsil hypertrophy
高野賢一
(札幌医科大学教授・耳鼻咽喉科学)

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ニュートピックス

・従来,口蓋扁桃肥大に対して扁桃摘出術(tonsillectomy)が一般的に行われてきたが,近年は低侵襲である扁桃切除術(tonsillotomy)も見直されつつある.

治療のポイント

・小児の閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)は,心身の発育のみならず,行動や学習上の問題にも大きな影響を及ぼすために,確実な治療が求められる.

・口蓋扁桃摘出術は感染・炎症性疾患からOSAに対する適応が増加してきている.

・小児のOSAに対するアデノイド切除術および口蓋扁桃摘出術はきわめて有効な外科的治療法である.

◆病態と診断

A病態

・一般的に就学前後に生理的なアデノイド肥大がピークとなる.口蓋扁桃肥大のピークはそれよりやや遅れ,おおむね10歳以降に退縮が進み,思春期以降には肥大はほぼ消失する.

・アデノイド増殖症,扁桃肥大の病態は,免疫系未成熟によるリンパ組織の反応性過形成のほか,感染や遺伝など種々の要因が指摘されている.

小児のOSA(obstructive sleep apnea)の多くは,アデノイドや口蓋扁桃肥大が主因となり,上気道の部分的閉塞によりいびきや無呼吸・低呼吸をきたす.

・アデノイド増殖症は呼吸障害のほか,滲出性中耳炎や鼻副鼻腔炎の遷延化の要因にもなる.

B診断

1.問診

・小児OSAを疑う睡眠時の症状として,いびき,無呼吸,あえぎ呼吸,陥没呼吸,夜尿,多汗,頸部過伸展などがある.保護者による観察が重要であり,スマートフォンなどで睡眠時の動画撮影をしてもらうのもよい.

・日中の症状として,傾眠,不注意,多動,問題行動,学習能力低下なども参考となる.

・問診にはOSA-18質問紙〔Francoら,2000),日本語版(宮内ら,2006)〕を用いるのもよい.

2.アデノイド・口蓋扁桃の評価

・口蓋扁桃は舌圧子にて舌(舌根)を圧迫し観察する.小児は咽頭反射が強いため,診察時は留意

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