今日の診療
治療指針

音声障害
voice disorders
中村一博
(日本大学准教授・耳鼻咽喉・頭頸部外科学)

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GL音声障害診療ガイドライン2018年版

治療のポイント

・音声障害の原因には生命にかかわる疾患や病態は多くない.しかし,音声障害はコミュニケーション障害であり,社会生活において大きな障害となる.音声と言語を用いたコミュニケーションはヒト特有である.

・音声障害の原因により,症例ごとに最善の治療を考慮する.治療の三本柱は,薬物治療,音声治療,手術である.どの治療をどの順番で選択し施行するかは,多くのバリエーションがありうる.

・音声障害を専門とする医療機関には,高度専門性を求める患者が受診するため,より高度な診断と治療が求められる.

◆病態と診断

A病態

・音声障害の原因はたくさんあるが,事象をシンプルに考えると「音声が悪い」である.声帯振動に何らかの障害があり,正常な音声波形が生成されないのが病態である.

・自身の声を用いたパフォーマンスで生計を立てているエリートボーカルパフォーマー(EVP:elite vocal performer)や声をたくさん使う職種であるプロフェッショナルボイスユーザー(PVU:professional voice user)にとって,音声障害は重大な疾患である.

・器質的疾患と機能的疾患に分けて考える().

B診断

・問診は重要である.まず声がどう悪いのかを詳細に聞く.いつからか,音質の変化の有無,症状出現の特定の時刻や場面での変化を問診する.既往歴,服薬歴,喫煙歴,飲酒歴,社会生活習慣も聴取する.職業もポイントである.職種の詳細,声の使用の頻度や程度につき問診する.声にかかわる趣味も聴取する.

・音声障害の診断に重要な聴覚心理的評価方法にGRBAS尺度がある.嗄声の程度を総合的に判断するG:gradeとその他の4要素で構成されている.5要素をそれぞれ聴覚印象で0~3の4段階で評価する.

・自覚的評価としてvoice handicap index(VHI

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