今日の診療
治療指針

がん患者の口腔ケア
oral care for cancer patients
片倉 朗
(東京歯科大学教授・口腔病態外科学)

ニュートピックス

・がん患者の在宅療養が増加し,がん患者に提供するベストサポーティブケアのなかで,口腔ケアは治療の継続・低栄養の予防・緩和治療のための支持療法と捉えられている.

治療のポイント

・がん治療のいずれの治療法でも口腔内環境の悪化は治療の成果に影響する.口腔内環境の悪化は特に放射線治療・化学療法治療ではその完遂の妨げとなることもある.

・口腔ケアの目的は口腔の衛生管理と機能管理である.歯科医師・歯科衛生士と協働し,誤嚥性肺炎の予防・口腔粘膜炎の症状軽減と早期回復・保清と保湿による自浄性と経口摂取の維持をはかる.

◆病態と診断

A病態

・化学療法と放射線治療に関連して惹起される口腔症状の本態は口腔粘膜炎口腔乾燥である.これらに口腔内細菌叢の変化(グラム陰性桿菌の増加)と免疫力低下が加わり日和見感染をきたし,症状悪化のスパイラルに陥る.また,起炎菌が混入した唾液や気道分泌物により誤嚥性肺炎や上部消化管などの創部感染をきたす.

・いずれも治療終了後には漸次回復するが,口腔ケアは症状の軽減と悪化予防,早期回復を促しQOLを向上する.

B診断

・口腔粘膜炎と口腔乾燥は主に臨床所見で評価・診断する.

・口腔粘膜炎は,米国国立がん研究所(NCI:National Cancer Institute)の分類(CTCAE:Common Terminology Criteria for Adverse Events)でGrade1~5の5段階に分類される.

Candidaの併存が疑われる場合には真菌培養検査を行う.

◆治療方針

 がん治療における口腔ケアの目的は,①治療前の口腔内環境の改善,②治療中の口腔衛生管理,③口腔粘膜炎と口腔乾燥の予防と治療,④摂食・咀嚼・嚥下機能の維持である.がん治療の開始前に齲歯や歯周病の治療,義歯の調整などを行い口腔衛生環境と機能を整備する.化学療法・放射線療法の開始時から,歯科

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