治療のポイント
・口腔感染症の多くは,口腔常在菌に由来する歯性感染症であるが,容易に菌血症を生じるばかりでなく,時に重症化し,組織間隙を介して急速に進展し,蜂窩織炎,膿瘍形成に至る.
・抗菌薬の使用だけでなく,局所消炎処置の併用が重要である.
・さまざまな全身疾患に影響するため,日頃から医科歯科連携による歯周病の予防・治療が望ましい.
◆病態と診断
A病態
・歯周病は慢性歯性感染巣であり,容易に菌血症を生じるだけでなく,代表的な歯周病病原菌Porphyromonas gingivalisの菌体,内毒素(LPS:lipopolysaccharide)や,炎症性サイトカイン,ケミカルメディエーターなどを血管内に送り込み続け,他臓器にまで影響を及ぼす.
B診断
・血液検査などにより,炎症の程度,全身の状態を判定する.
・全身の炎症の徴候の有無を確認し,CTなどの画像所見から炎症巣の存在,進展領域を探索する.
◆治療方針
歯性感染症では,顎骨,膿瘍腔などへの抗菌薬移行濃度が低いため,膿瘍切開などの適切な局所処置を併用することが重要である.菌血症,敗血症においては,厳重な全身管理が必要である.また,摂食障害を伴う場合には栄養管理が重要である.
A歯性感染症の治療
歯性感染症の臨床分類群別に,処置およびempiric therapyに用いる抗菌薬の推奨がある(「JAID/JSC感染症治療ガイド2019 ―ⅩⅤ 歯性感染症―」).口腔レンサ球菌感染の頻度の高い1,2群(歯周組織炎,歯冠周囲炎)の中等症以上では,βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬のクラブラン酸アモキシシリン(CVA/AMPC)が第1選択薬とされる.嫌気性菌が優位となる3,4群(顎炎,蜂巣炎)では,外来ではセフトリアキソン(CTRX)1g点滴,重症入院例では,スルバクタム/アンピシリン(SBT/ABPC)1g点滴が第1選択とされる.早期に,適