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治療

突然の腹痛―緊急検査と応急処置
sudden onset abdominal pain:emergency examination and treatment
進士誠一
(日本医科大学講師・消化器外科学)

頻度 よくみる(救急外来で腹痛を主訴とする受診者は5~10%)

GL急性腹症診療ガイドライン2015

A急性腹症の定義

 1週間以内の急性発症で,緊急手術を含む迅速な対応を要する腹部疾患群を急性腹症とよぶ.

B診断のポイント

 急性腹症は軽症から生命を脅かすものまで,さまざまな疾患により生じる可能性がある.また急性腹症における症状は,最初は非特異的で,時間の経過とともに疾患特異的な症状へ発展することがある.

 急性腹症の初期診療は2 step methodsで行われる.

1)ステップ1:最初に患者のバイタルサインを確認し,バイタルサインに異常がある場合には緊急処置を行うとともに,すみやかに原因疾患に対する治療を開始する.根治的治療が困難な場合は,緊急処置を施して患者の転院を考慮する.

2)ステップ2:バイタルサインに異常がないときは,病歴,腹部所見から緊急手術の必要性を判断する.また,血液検査・画像検査から,手術を必要とする病態(出血,臓器の虚血,汎発性腹膜炎,臓器の急性炎症)が合併していないかを診断する.

 超緊急疾患として考えるべき疾患として,急性心筋梗塞,腹部大動脈瘤破裂,肺動脈塞栓症,大動脈解離などがあげられ,即時に治療を開始する必要がある.また緊急疾患として考えるべき疾患として,肝癌破裂,異所性妊娠,急性腸管虚血,重症急性胆管炎,敗血症性ショックを合併した汎発性腹膜炎(下部消化管穿孔に多い),内臓動脈瘤破裂などがあげられ,緊急手術もしくはIVR(interventional radiology)が必要である.

 年齢や性別により,急性腹症の原因となる疾患の頻度は異なる.高齢者における病態把握は困難なことが多く,危険度が増すことを念頭におくべきである.なお40歳以下の女性における急性腹症は45%が産婦人科系疾患であり,骨盤内炎症性疾患,卵巣茎捻転,卵巣出血,卵巣腫瘍(破裂,出血など),

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