診療支援
治療

閉塞性ショック
obstructive shock
藤見 聡
(大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター・救急診療科主任部長)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・閉塞性ショックの3大原因は,緊張性気胸,心タンポナーデ,肺塞栓症である.そのいずれについても,ショックを遷延させないために,診断医による現場での緊急処置が求められる.

・緊急処置を行ったあとに専門医へのコンサルトを行う.

A病態

 循環血液量が十分あるにもかかわらず,左心系が充満しないことで起こるショックである.上・下大静脈,右心房,右心室,肺動脈,肺毛細血管床のいずれかの部分での血流障害が起きている.

 拡張期充満障害として,①下大静脈閉塞(下大静脈の腫瘍など),②胸腔内圧の上昇〔緊張性気胸,人工呼吸管理での高PEEP(呼気終末陽圧:positive end-expiratory pressure)など〕,③心臓拡張コンプライアンス低下(心タンポナーデなど)がある.

 右心系拡大・拡張による左心充満不全として肺塞栓,肺高血圧症などがある.

B診断と治療

 4種のショックの原因を精査するなかで鑑別診断を行う.ショックを認知した場合に,適切なモニタリングを実施したうえで,頸静脈の怒張と,超音波検査にて下大静脈の拡大を評価する.心音・呼吸音・下腿の浮腫の有無を評価することで閉塞性ショックを疑いさらなる検査で診断する.ここでは緊急処置対応が必要な3疾患に対して記載する.

1.緊張性気胸

 肺臓側胸膜が一方弁となり胸腔内に吸気による空気が漏れて,胸腔内圧が高まることで発症する.身体診察により,気管の偏位,呼吸音減弱,皮下気腫などがあった場合に,すみやかに胸部単純X線写真を撮影し診断を確定する.X線撮影をすぐ行えない環境下では,肺エコーの診断も経験があれば有用である.

 診断後は直ちに胸腔ドレナージによる脱気が必要である.熟練医は身体診察のみで診断,ドレナージを行うというが,その経験が十分でない医師は胸部X線写真撮影後に脱気を行うことをお勧めする.原因としては外傷やブラ

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