診療支援
治療

急性脱水症
acute dehydration/acute volume depletion
三宅康史
(帝京大学教授・救急医学)

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治療のポイント

・現病歴と臨床所見から脱水を,バイタルサインから重症度を推測する.

・まずは細胞外液の急速投与でバイタルサインの改善を見極める.

・並行して電解質,血糖,心機能,腎機能を確認する.

・情報が揃ったら,点滴の種類と点滴速度を再設定する.

◆病態と診断

A病態

・急性(acute)→早めの治療を要する.

・英語での表記は2つある.

1)主に水分喪失(dehydration):水分摂取不足,発熱,高血糖による浸透圧利尿,熱中症,尿崩症など→細胞外の電解質(Na)濃度が上昇=高張性脱水.

2)体液そのものの喪失(volume depletion):下痢,嘔吐,出血,利尿薬の過剰投与など→水分も電解質(Na)も同時に失われるのでNa正常範囲=等張性脱水.低張性脱水(水分喪失<Na喪失)に陥るのは,食事(Na)摂取不足に対しお茶や維持液点滴で補充を試みるも不十分,急性腎障害の多尿期,脳性Na喪失症候群など少数派.

・細胞外のNa濃度が上昇(=高張性)すれば,体内水分量の2/3を占める細胞内の水分が浸透圧差によって細胞外に移動し循環血漿量(細胞外水分量の1/4)の減少を補填.細胞内脱水により口渇を感じて飲水行動も起こる.問題は①急速に起こった場合に,細胞内から外への水分補填が間に合わない,②意識障害患者や口渇感の乏しい高齢者,クラブ活動など飲水できない状況.

・Na濃度の上昇がない(=等張性,低張性)状況では,細胞内脱水が細胞外と同じように進む.低張性ならば細胞内に水分が移動することで細胞外水分量(循環血漿量)がさらに減少するため,重症化リスク(頻脈,低血圧,循環不全)は高い

B診断

・脱水,体液喪失とも臨床症状,臨床経過からある程度疑ったら,細胞外液の点滴による診断的治療を開始すべきである.

・バイタルサインとして頻脈,低血圧,身体所見として皮膚ツルゴールの低下や腋窩の乾燥,口腔内の

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