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治療

腸閉塞
intestinal obstruction
江口 晋
(長崎大学大学院教授・移植・消化器外科学)

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GL急性腹症診療ガイドライン2015

◆病態と診断

A疫学と定義

・わが国の急性腹症の原因疾患のうち,腸閉塞は男性では3番目,女性では2番目に頻度が高く,発症後30日以内の腸閉塞の死亡率は5%程度と,術後の合併症としてきわめて重要な疾患である.

・わが国では,長らく“腸閉塞”と“イレウス”は同義語として用いられていたが,海外では以前より,腸閉塞(bowel obstruction)は機械的腸閉塞のことを意味し,イレウス(ileus)は,機械的な閉塞を伴わない腸管蠕動麻痺と明確に区別されている.

・腸閉塞は血流障害を伴わない単純性腸閉塞と血流障害を伴う絞扼性腸閉塞に分類される.

・単純性腸閉塞の原因として最も多かったのは大腸手術で約3割を占め,次いで胃手術,婦人科手術である.また単純性腸閉塞の3.5%は悪性腫瘍に起因しており,特に大腸癌が原因となることもあり,経肛門的減圧管留置,ステント留置,人工肛門造設など高次医療を要する.

・絞扼性腸閉塞は,診断・治療が遅れると死に至る可能性がある重篤な疾患であるが,診断に難渋する症例もあり,注意を要する.単純性腸閉塞と比較して病状の進行が速く,初期対応を誤ると腸管壊死から腹膜炎,敗血症性ショックに陥り死亡することがある.血流障害を認めるものの,消化管穿孔,腹膜炎をきたしておらず,腸管切除の必要もない症例では予後良好であるため,早期の診断が重要である.

B診察の進め方

・腸閉塞の診断においても,問診と身体所見が大切である.腹部手術の既往がないか必ず確認する.特に,近年は腹腔鏡手術で臍からアプローチし,手術創がわからない場合もあるため,よく聴取する.痩せで多産の高齢女性では閉鎖孔ヘルニアを発症することが多いため,出産回数も確認する.また全身状態の悪化からイレウスを生じることもあり,既往歴,現病歴をよく聴取する.

・診察では,鼠径/大腿ヘルニアがな

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