診療支援
治療

口腔顎顔面外傷
oral and maxillofacial injury
鍬方安行
(関西医科大学主任教授・救急医学)

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GL改訂第6版 外傷初期診療ガイドラインJATEC(2021)

GL形成外科診療ガイドライン 2 2021年版

GL口腔顎顔面外傷 診療ガイドライン2015年改訂版

治療のポイント

・重症例での治療優先順位は,まず①気道の開通・確保,次に②循環の安定化・止血処置,③頭部外傷合併有無の確認であるが,これら重篤例については「改訂第6版 外傷初期診療ガイドラインJATEC」を参照のうえ救命的外傷初期診療を実施する.

・中等症までの症例では,「形成外科診療ガイドライン 2 2021年版」を参照のうえ機能的・整容的予後を考慮した場合の緊急性を適切に判断し,専門診療科に委ねる時期を見極める.

◆病態と診断

A病態

・口腔顎顔面は,上気道を構成しており,血腫形成や多量出血,複雑な下顎骨折などに伴う舌転位により気道閉塞をきたしうる.

・血行豊富な部位であるため内外止血が多量になる.

・幼少児では,箸などによる口腔杙創が頭蓋内に達することがある.

・顎顔面への鈍的外力は頸部血管への過伸展介達力となり,頭蓋内に向かう主幹動脈の内膜損傷,解離などを生じ,結果として2次的な出血や脳梗塞をきたす.

・運動・知覚を司る脳神経損傷を合併し,重篤な機能障害をきたす.

・皮膚粘膜・軟部組織損傷であっても,機能的・整容的障害を残すリスクがある.

B診断

・気道開通の有無:よびかけに対する発声応答で気道開通を確認する.応答がない,陥没呼吸など上気道に起因する呼吸障害がある,あるいは鼻腔口腔の出血量が多く窒息のリスクがある場合などには迅速な気道確保が必要と診断する.

・出血部位の確認:口腔・顎・顔面は血行が豊富であり,出血をきたしやすい.特に直視できない出血部位の把握には,CT angiographyなどの画像診断が必要になる.

・穿通外傷の診断:穿通外傷は頭蓋内損傷のリスクを伴うため,CTやMRIによる診断が必要になる.

・受傷部位

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