頻度 あまりみない
治療のポイント
・Primary surveyで同定すべき致死的胸部外傷の1つであり,呼吸(B)の異常の際には,見逃さないことが必要である.
・Primary surveyでの蘇生とともに,胸腔ドレナージの挿入と開放創の閉鎖が治療となる.
・開放創の閉鎖には十分な洗浄とデブリードマンが必要である.
◆病態と診断
・銃創やナイフによる鋭的な損傷で起こることが多い.
・胸壁に欠損をきたす損傷を生じると,開放性気胸またはsucking chest woundとよばれる病態となる.
・創傷口から血液の混じった泡がみられたり,空気の出る音や感覚が特徴的な所見となる.
・胸壁に気管径の2/3以上の開放創を生じると,気道よりも抵抗の低い胸腔欠損部から吸気時に空気が流入し,胸腔内圧と大気圧が同レベルとなる.肺は虚脱し,有効な換気ができず,短時間で低換気と低酸素が生じ,致死的となる.
・また,より小さな開放創でも吸気時に空気が胸腔内に吸い込まれる現象が生じると創(sucking chest wound)が一方弁となり容易に緊張性気胸へと発展する.
・Primary surveyで同定すべき致死的胸部外傷の1つであり,呼吸(B)の異常や胸壁の損傷がある際には,見逃さないことが必要である.
◆治療方針
プレホスピタルや一時的な処置としては,開放創を十分な大きさの防水・滅菌素材で覆い,三辺をテープで固定する(三辺テーピング法).このことにより吸入時の空気流入を防ぎ,胸腔内圧が高くなった場合は空気の胸腔外流出が可能となるワンウェイの空気逆流防止弁となる.
米国のTactical Combat Casualty Care(TCCC)ガイドラインでは,現場で一方弁付きの専用のドレッシング(チェストシール)を胸部開放創に使用することが推奨されている.
開放創では,胸腔ドレナージの挿入と胸壁損傷部の十分な洗浄と