治療のポイント
・IABPは,血行動態をサポートする補助循環デバイスである.
・これまでACSの補助循環の主役であったが,臨床的有益性を検証する国内外の無作為化試験やメタ解析では,ACS患者に対するIABPのルーチン使用の有効性は認められていない.
・本邦の「急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)」でも心原性ショック患者に対するルーチンのIABP使用は推奨されていない(クラスⅢ).
・欧米では強力な循環補助作用をもつ補助循環用ポンプカテーテル(Impella)がIABPに代わり広く使用されるようになってきている.
・本邦でもImpellaは広まりつつあるが,使用可能な施設はまだまだ限定されている.
・IABPはその簡便さ,低い合併症率により,補助循環デバイスとして本邦ではまだ広く使用されている.
・補助循環デバイスも多様化し,それぞれ血行動態上の利点・欠点があり,対象に得手・不得手があるので,あるデバイスがほかのデバイスより優れていると一概にいえるものではない.また1つのデバイスの欠点をほかのデバイスとの併用で補うことも可能である.病態に基づいた適切なデバイス選択が望まれる.
A適応
1)心原性ショック
2)心筋梗塞後の機械的合併症(僧帽弁閉鎖不全,心室中隔穿孔など)
3)薬剤抵抗性心不全
4)開心術後の低心拍出量症候群
5)重症虚血性心疾患に対する冠動脈再灌流療法の補助
6)心筋虚血に基づく難治性心室性不整脈
B禁忌
1)胸腹部大動脈瘤
2)急性大動脈解離
3)閉塞性動脈硬化症/大動脈の蛇行
4)重症大動脈弁閉鎖不全症
5)高度な凝固異常
C合併症
カテーテルのサイズが細径で,ポンプを使用しないシステムであるため,ほかの機械的補助循環に比較して合併症の頻度は低い.
1)挿入側下肢の虚血
2)挿入部の出血・血腫
3)コレステロール結晶塞栓症
4)バルーン穿孔
D手技
カテーテルは,大腿動脈から下行大動脈に経皮的に挿入し