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治療

気道異物除去法 [■呼吸系の緊急処置]
☆☆
removal of foreign body airway obstruction
土井研人
(東京大学大学院教授・救急集中治療医学)

◆病態と診断

・上気道および下気道において,異物は物理的な閉鎖をきたすことに加えて,組織の損傷や炎症を惹起しうる.

・気道異物は高齢者と小児に多く,特に生後6か月から3歳程度の乳幼児は異物を口に入れやすいことから,喉頭や下気道への異物誤嚥,誤飲をきたしやすいとされている.

・小児においてはピーナッツや豆などの食物と,ビーズなどの玩具やボールペンのキャップ,歯牙が,成人では歯科用金属が異物の頻度としては高い.

・上気道閉塞では,突然の呼吸困難と喘鳴(stridor),嗄声が観察される.また,吸気延長,頸部と肩の副呼吸筋を用いた強い吸気努力,吸気時の過剰な胸腔内陰圧による胸骨上縁や鎖骨上窩,肋間の陥凹,胸部と腹部が逆位相に動くシーソー呼吸などが特徴である.

・下気道に異物が存在する場合,呼吸困難,咳嗽,異物周囲を中心とした呼気時喘鳴(wheeze)などが観察され,咳や血痰のみを呈することも多い.特に小児や高齢者において,繰り返す肺炎や持続する咳嗽の場合には,下気道の異物の存在を疑う必要がある.

・異物がX線非透過性の場合には単純X線検査が有用であるが,特に小児においてはX線透過性異物のことが多く,この場合,呼吸音が減弱した側で気腫性変化があれば,異物が原因のチェックバルブによる下気道閉塞(片側気管支)を疑う必要がある.

・呼気相と吸気相の単純X線検査において,縦隔陰影が呼気相では健側に,吸気相では患側に移動する現象(Holzknecht sign)が観察される.

・異物が疑われるものの単純X線検査で異常所見が得られない場合にはCT検査を施行すべきである.

・確定診断には喉頭鏡や喉頭ファイバースコープ,気管支鏡検査による直接観察が必要である.

◆治療方針

A初期対応

 一次救命処置として背部叩打法と腹部突き上げ法をまず行う(,「一次救命処置(BLS)―成人」の項参照).意識がなくなり脈拍の触知が不可能

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