A緊張性気胸に対する緊急処置
緊張性気胸では,患側胸腔内に空気が一方的に取り込まれることで,肺虚脱,横隔膜低位,縦隔シフトなどがみられ,静脈還流障害で心拍出量が低下し生命危機に直面する.胸部外傷患者や人工呼吸器による陽圧呼吸時でその発生率は上がり,超緊急的処置が必要になる.第2肋間,鎖骨中線上で最小16Gの静脈留置針を留置する.あるいは第4~5肋間,中腋窩線上に皮膚切開を加え肋骨上縁で胸膜を開放する.引き続き胸腔ドレーンを留置する.
1.胸腔穿刺
a.適応
胸水貯留に伴う呼吸障害に対する治療や,胸水の性状確認や細胞診などの診断的目的で行われる.
b.準備
22~16Gの各サイズの静脈留置針(診断目的では細め,治療目的では太めを用いる),注射器〔10mL(2本),20mL,50mL〕,三方活栓,点滴用延長チューブ,消毒液,ガーゼ,ドレープ,局所麻酔薬などを準備する.
c.穿刺部位
胸水が貯留しやすい体位をとる.サイドテーブルなどに腕を掲げ置き,端坐位をとる.坐位が困難な場合は仰臥位でベッドアップを行う.超音波検査で胸水の貯留を確認し穿刺部位のマークを行う.肩甲骨下角が第7肋骨と交差するが,第9肋骨以下での穿刺は,横隔膜,肝臓や脾臓損傷のリスクがある.また,肩甲骨真中より脊柱寄りでは,肋間動脈が肋間中央寄りに蛇行するので穿刺を避ける.臥位では中腋窩線上を目安に穿刺する.
d.麻酔
皮膚消毒を行いドレープで覆う.穿刺部位の肋骨上縁に25G注射針で皮膚を麻酔し,続いて22G注射針で深部の麻酔を行う.胸壁に対して垂直に注射器を保持して吸引と麻酔薬の注入を繰り返しながら少しずつ進める.肋骨上縁から肋間に侵入し胸水を吸引したら少し注射針を戻し,胸膜中心に麻酔薬を追加注入する.皮膚と胸腔までの距離を把握しておくことが重要である.
e.穿刺
目的に応じた静脈留置針を用いて10mL注射器を接続する.注射筒